前代未聞「流れ星新幹線」、運行までの密着ルポ 一夜限りのイベント、リハーサルで大トラブル

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3月14日、「流れ星新幹線」本番当日。ビューイング会場となった筑後広域公園多目的広場には事前申し込みと当日参加合わせて2105人の来場者が集まった。新型コロナ対策として、会場入り口での検温、手指消毒、ソーシャルディスタスを確保できる観覧スペースの区分けが行われた。列車の到着まで会場内では「流れ星新幹線」の今の走行シーンやHKT48のライブなどが中継され、さながらライブ会場のような雰囲気だ。

やがて遠くから夜空に光を放つ新幹線がやってきた。会場の明かりは消され、来場者も声を潜めながらその時を心待ちにしている。特設会場前では「流れ星新幹線」が駅間にもかかわらず本線上で一時停車する。これは鉄道、特に新幹線の常識ではありえないことで、夜間で運転本数が少ないことも幸いした。駅では停車位置を記した「停止位置目標」があるが、今回は駅間なのでそのような標識はない。そのため、この列車を担当した運転士は停車位置の判断が難しかったそうで、リハーサルでも運転を担当。事前に決めていた「電柱」を目印に位置を見極め、さらに当日は運転席と会場を無線で繋ぎ、微妙な位置調整を行った。

停車した「流れ星新幹線」から光の演出がはじまった。会場内に音楽が流れる。懸案事項だった音楽と光のパフォーマンスも本番では完璧にシンクロした。リハーサルでの失敗を忘れさせてくれるような完璧な演出だ。時期柄歓声こそあがらないが、会場内が一体感で包まれてゆく。コロナ禍では忘れかけていた感覚だ。本番走行では、安全上の問題がないことが確認されたため、車内のライトも基本的に点灯したままで走行し、トンネル間のわずかな地上区間で待つ沿線の人にも確実に「流れ星」を届けられるように改善。ムービングライトの角度も最後までこだわって、より流れ星に見えるように追求した。

完璧なパフォーマンスをやり切ったあと、「流れ星新幹線」は再び博多へ向かって出発。この瞬間我に帰り、それまで目の前で光り輝いていたものが「新幹線」であったことを思い出した観客も多かった。

イベントはまだ終わっていない

大成功に終わったように感じた本イベント。改めて宮﨑氏に話を聞くと、氏の中では今回の出来事にはまだ続きがあるという。

「流れ星新幹線」プロジェクトの指揮をとったJR九州鉄道事業本部営業部営業課宮﨑龍一課長代理(筆者撮影)

「今日はイベントの成功ではあるかもしれませんが、本当の成功と言える瞬間は、今日の流れ星新幹線との出会いによって、皆さまが夢の実現や願いを叶えるために一歩踏み出すきっかけになった瞬間だと感じています」。

SNSに並んだこのイベントの感想には、単に綺麗だったと述べる言葉だけでなく、JR九州への感謝や応援の言葉が多く見られたのは、同社が「なにを大切にしてきたか」の証しのように思う。九州新幹線全線開業20周年、30周年と、それに限らず、これからも鉄道界の「前代未聞」を創作し続けてくれることを、JR九州へ期待せずにはいられない。

村上 悠太 鉄道写真家

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むらかみ ゆうた / Yuta Murakami

1987年東京都生まれ。高校時代には「写真甲子園」に出場。交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』にて「突撃!ユータアニキ 鉄道HERO完全密着」連載中。撮影の講師や講演を多数行う。

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