転職したい人が「社内に残る」ことを選んだワケ キャリア相談に乗るスタートアップが増える

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転職にかぎらず、さまざまなキャリアプランの相談に乗るスタートアップが登場しています(写真:フルオル提供)

「今の会社に勤め続けるのが本当にいいのだろうか?」――。

新型コロナウイルスの感染収束が見えず、経済の先行き不透明感が強まる中、キャリアや働き方に不安を感じる人が増えているようだ。そんな中、スタートアップ企業がキャリアに関する相談・助言サービスを個人に提供し、利用者を伸ばしている。

これらは一般的な人材紹介サービスと異なり、「転職が前提」ではなく、自宅にいながらにしてオンラインで手軽に受講できる点が人気だ。価値観や働き方の多様化を背景に第三者が提供するアドバイスの需要は高まりそうだ。

大手航空会社で整備士として働いていた伊井武さん(28)。大学時代に学んだ工学の知識を生かしたいと考えて新卒で入社、飛行機のエンジン整備に2年間携わっていた。

「自分は整備しかやっていないので、さまざまな業種の人の働き方を知りたい」。そう考えた伊井さんは社会人向けOB訪問サービス「CREEDO(クリード)」に登録。大手企業からスタートアップに転職した経験のある男性を見つけて、ビデオ通話で体験談を聞いた。「大手は与えられた役割をこなせばよいが、スタートアップは自分の成果だけでなく全体最適の視点が求められる」などとアドバイスを受けたという。

航空業界を取り巻く環境が悪化

折しも、コロナ禍で航空業界を取り巻く環境が急速に悪化した。伊井さんは「このまま漫然と大手にいるのはリスクがあるのではないか」と転職を決意。2020年5月からはロボット関連のスタートアップで製品開発や運用などに携わる。

伊井さんは仕事を通じてさまざまな業界の人と話す機会があり、充実した日々を過ごしているという。「頼れる人が周囲にいない中で、クリードで転職前にいろいろな人の話を聞けて、心の準備ができた」(伊井さん)。

伊井さんが利用したクリードを運営するスタートアップのブルーブレイズ(東京都豊島区)は2020年3月に、社会人同士のOB訪問をネットで仲介するサービスを始めた。2021年3月時点で約3000人のユーザーが登録、聞けるキャリア経験談の数は1200を超える。

経験談の料金はユーザー自身が設定し、初回は30分あたり無料または500円。回数を重ねると設定できる上限金額が最大1万円まで上がる。求人企業と求職者の間に入る転職エージェントなどと違い、利害関係のない個人の立場のため、「リアルな情報を伝えられ、良い面だけでなく悪い面も話しやすい」(都築辰弥代表)という。

都築代表は「新卒の就職活動ではOB訪問が盛んだが、転職活動においては経験者に話を聞く手段はかぎられていた。百人百様の経験談を共有し、社会人が納得のいくキャリアを歩めるようにしたい」と創業の理由を説明する。

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