なぜ大戸屋は、アジアで大人気なのか 秘訣は、進出先企業との上手な結婚と離婚!?

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

超細かなマニュアルを作成、信頼を得る

もちろん、現場はさまざまな苦労をしている。大戸屋の場合、大胆にも、進出当初は各店に、日本人のエース級店長を1店舗に1人はり付け、味やサービスを日本と同様にできるよう担保する。

しかし「エース店長をもってしても、現場は大変だ」と語るのは、立ち上げ期を担った大戸屋の前タイ法人社長、島村利美氏だ。現地のスタッフにどれだけ丁寧に伝えても、そこは、文化の違いもありすぐには理解してくれない店員もいる。

現場では刺身定食を顧客に出すとき、ワサビと山椒を間違えて、「山椒を醤油と混ぜて食べて下さい」(意外においしい!?)と客に言ってしまったり、「トンカツの揚げ時間は4分」と、口を酸っぱくして伝えたはずが、早めに揚げてしまい、中途半端なまま(この場合、再度揚げるため油がべっとりついたトンカツになる・・)といったケースがままあった、という。

そこで、同社は全メニューについて、肉や野菜の1カットごとの細かい切り方から揚げ物の秒数まで、子供でもできるようにと、他社ではありえないほど細かいマニュアルを用意した。

また、料理の肝である調味料についても、味付けをする際は、単に混ぜるだけで済むように、なんと1食単位で用意した。さらに、「現場のスタッフが食べないことには始まらない」と、従業員には1週間に1食ではあるが、大戸屋のメニューを無料で食べられるようにしたところ、徐々に成長していったという(やはり高価格なので、通常ならスタッフがお客の立場で食べるのはそう簡単ではない。だから、この措置は皆大喜びである)。

「店内の調理で日本の味をお客様に」と語る濱田専務

そこまでの投資をして、現場でここまでやるのは、大戸屋が、「同社の最大の競争力とは、店内で調理をすることで、日本とまったく同じ品質の味を出せること」と考えているからだ。

こうして直営からFCへの売却という流れで展開を進めてきた大戸屋だが、同社は、もちろん投資ファンドではなく、あくまで飲食チェーンだ。

「私たちは工場でつくられた料理ではなく、店内の調理で日本の味をお客様に提供することが、何より大切だと考える。だから、店内調理と大戸屋の味を守るという約束ができない企業には、たとえ他の3倍の値段を出すと言われてもFC先として売却することは決してない」(濱田専務)。

今回は筆者の経験も踏まえて、企業がグローバルで成功するための、戦略的な結婚・離婚の決断について見てきた。目先の利益だけにとらわれず、かつ自前主義にこだわらず、信念を持って急速にグローバル展開を進める大戸屋。ぜひとも、参考にしていただければ幸いだ。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事