日銀が「金融緩和の点検」に込める2つの狙い 慶応大・白井さゆり教授に聞く金融政策の今後

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慶應義塾大学の白井さゆり教授は「株を買っている日銀には出口が見えない」と語る(撮影:梅谷秀司)
かつてない大規模な金融緩和と財政出動によって世界経済は回復傾向にある。その一方、長期金利の急騰や高値が続く株価は乱高下している。
市場の混乱が続く中、「金融緩和の点検」を行う日本銀行やアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)はどう対応していくのか。
日本銀行の元審議委員で、国際金融に詳しい慶應義塾大学の白井さゆり教授に聞いた。

焦点は「柔軟性の拡大」

――日銀の「金融緩和の点検」をどのように予想していますか。

2020年12月に点検をやると発表したとき、何のためにやるのかと驚いた。国債の買い入れについてはイールドカーブ・コントロール(YCC)の導入により量が重要でなくなり、コロナ禍で国債の買い入れは無制限になった。

10年債金利は2018年に変動幅を拡大させ、ETFやJ-REITの買い入れも弾力化している。緩和手段としてこれ以上やることはない。

日銀は今回、金融緩和をより効果的にすると言っているが、これまで物価目標の2%に近づけるような効果のある政策はなかった。追加緩和は考えにくいし、金融緩和の枠組みは変えないと言っていることからすると、あとは「柔軟性の拡大」しか考えられない。

狙いは恐らく2つある。

1つは10年債金利の変動幅拡大。現在のプラスマイナス0.2%をプラスマイナス0.4~0.5%にする。アメリカの金利上昇とともに、日欧の金利も上昇しているが、変動幅が狭いとコントロールが大変になる。YCCをやりやすくするとともに、イールドカーブの傾きを急にしたいのだろう。

――もう1つは何ですか。

ETF買い入れの柔軟化だ。2018年7月の弾力化で、ETFの買い入れをゼロにできるはずだが、「原則6兆円」という言葉が残っているのがネックになっているようだ。国債の買い入れはYCCがあったので、80兆円の目標を掲げつつ金額を減らすことができた。しかし、ETFにはそうした手段がない。

私は、原則6兆円というETFの買い入れ目標は撤廃したほうがいいと思う。最近のように割高な株価水準なら、株価の変動があっても買う必要はない。

問題はどう表現するかだ。「最大12兆円」という言葉は残しておくにしても、ゼロまで減らす可能性をネガティブに捉えられるのを日銀は恐れている。バブル的になってきた中で、株価の暴落だけは起こしたくないだろう。

東洋経済プラスの連載「黒田日銀『苦闘』の最終章」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。連載では黒田日銀下の金融政策の課題を取り上げています。
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中村 稔 東洋経済 編集委員
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