山田邦子が今振り返る｢ひょうきん族の思い出｣ 今はYouTubeにも挑む彼女の｢生き抜く秘密｣

かつて銀行でお金を借りることになったとき、「NHKに出ていますか？」ということを聞かれたことがあります。私は不動産にいっさい興味がないのですが、あるときから親が不動産を買うように勧めてきました。「あなたを将来助ける資産になるんだから」と、財テクの専門家みたいなことを言います。契約するのに本人がいないといけないので、仕方なく母と一緒に銀行へ行ったりもしました。

銀行で、「15年ローンです」「はいわかりました」という会話をします。すると母が、「15年しか組めないの……」と口を挟むので、銀行の人にどういうことか聞くと、「山田さんは芸能人で収入の保証がないから長期のローンは組めないです」と言われます。なるほど、そのとおりじゃんと思いましたが、親はがっかりしたみたいでした。

でも朝の連続テレビ小説でNHKに出るようになったら、銀行は「いくらでも貸します！ どうぞどうぞ！」となりました。今はどうかわかりませんが、その頃はNHKへの出演が、信用のバロメーターになっていたようでした。そんなこんなでローンが組みやすくなると、母は「ずっとNHKに出てね」と言います。

まあいちばん身近な素人さんですね。それからは、母は「もうコマーシャルとNHKだけやればいいのに」とずっと言っていました。会計をしてもらっていたので、ギャラの大小を知ってそう思ったんでしょうね。人の苦労も知らずに、はぁ〜、ですね。

事務所からもらう給料は、カードも持っていない時代なので毎月末に現金で手渡しです。ずっと働いていて休みが1日もないから、お金は貯まっていきます。使い道がわからなくて、1回のお食事で200万円払ったことがありました。

10人ぐらいでふぐ料理の店とかで思い切り食べて飲んでドンチャン騒ぎをしたら、それぐらいいっちゃうんです。それもキャッシュで払っていました。当時は金銭感覚がおかしかったですね。

人気者は自分で買ってはいけない

たけしさんにはいろんなことを教わりました。あるとき、たけしさんがロレックスのすごくいい腕時計をしてきて、みんなで「いいなあ」と言いながら、1回ずつ着けさせてもらったことがあります。

さっそく次の日、同じ時計の女性用を買いに行き、たけしさんに見せました。きっと喜んでくれると思ったのですが、時計を見たたけしさんに「無駄遣いするな」と一喝されたんです。「俺はごひいきさんに買ってもらったんだ。人気者は買ってもらえるようにならなきゃだめだ」と言うのです。

シュンとして、なんだ先に言ってくれよと思いました。そのときの時計はキャッシュで135万円。いちばん最初の大きな買い物です。今も大切に取ってあります。腕時計ってせいぜい1万円くらいのものしか持っていなかったので、お店で見たときはびっくりしちゃいました。それからは俳優さんやお金持ちの人を見ると、みんなロレックスの腕時計をしていることに気がついて、そういうものだったのかと知りました。

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でも、普段の服装は質素でしたね。ジーンズとトレーナーぐらいしか持ってなくて、「ひょうきん族」のメンバーも同じような格好でした。ある日、誰かがルイ・ヴィトンの大きいボストンバッグを買って持ってきました。衣装がたくさん入って3日や4日の仕事なら大丈夫で便利だからと言って、見せてもらいました。関西勢は、現場にマネジャーさんがつくことが少なく、ひとりで動くから大きな鞄は便利です。

そうしたら、さんまさんも紳助さんもそのボストンバッグを買ってきた。私も買いました。肩からかけるのがかっこいいと言って、みんなまねしちゃって。ルイ・ヴィトンも今ほど高くなくて当時数万円くらいです。ジーパンとトレーナーで、ヴィトンを持って腕にはロレックス。そんなひょうきん族の頃をなつかしく思います。

放送開始から8年半が経った1989年10月に「ひょうきん族」は終了しました。「ひょうきん族」のメンバーとしてたくさんの濃い時間を経験できたことは今も私の誇りです。