太古の生物に「死は存在しなかった」驚愕の事実 細胞が自発的に「死ぬ」ようになったワケ

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最新の研究では、栄養分が不足する環境の中、“合体”することで、お互い足りない栄養素を補おうとした、と考えられています。これまでの生き方を180度変えた単細胞生物たちから、「生きたい!生き抜くぞ!」という声が聞こえてきそうですね。

こうして、“合体”することにより、単細胞生物たちは、体内にDNAを2組持つようになります。すると、くっついたDNA自身も、一部の組織が入れ替わるなど、変化が起きました。いわば「親」とは違う、新しい生命が誕生したことになります。私たち人間の仕組みと似ていますから、“先祖”が誕生した、とも言えますね。

さらに6億年後には、単細胞生物たちが進化します。“合体”した単細胞生物同士が、さらにつながりはじめました。細胞が複数ある多細胞生物の始まりです。

やがて進化を遂げ、海で暮らすもの、陸に上がるもの、空を飛ぶもの……さまざまな多細胞生物が誕生しました。もちろん、私たち人間も多細胞生物です。多細胞生物になったことで、あらゆる環境に進出でき、生き残る可能性が高くなったのです。

私たち人間のDNAにも、こうした「厳しい環境に耐えて生き抜く」ことが組み込まれているかもしれません。だとすれば、新型コロナウイルスの厳しい時代も、きっと生き抜けるはずです。勇気を持ちましょう。

多細胞生物に進化して起きた宿命

さあ、生命誕生から約24億年の旅を経て、「なぜアポトーシスが生まれたか」の話にたどり着きました。実はこれは多細胞生物に進化したことで起きた“宿命”と言えそうです。

多細胞生物になることで、同時に、数多くのDNAも存在することになります。しかし、このDNAは、食物の中の発がん性物質やストレスなどにより傷つきやすく、この傷が時問と共に蓄積されていくことが研究でわかっています。

例えば、生殖を担う細胞が傷を負うと、それは子ども、さらに孫に引き継がれていくことになります。すると集団のなかに傷が蓄積される、これを「遺伝的荷重」といいます。種が絶滅する可能性が非常に高くなります。

これを避けるためには、ある一定の時間を生きてDNAが傷ついた個体は「消去する」システムをつくっておけばよい、となります。ある程度の期間が経つと死ぬプログラムをDNAに書き込み、細胞が死ぬように指示すれば、「遣伝的荷重」による種の絶滅を防げるわけです。

これが、アポトーシスが生まれた理由と言えるのです。寿命は、種の絶滅を防ぐため、気の遠くなるような長い時間をかけて獲得した、現時点では抗うことのできない、私たち人間の宿命なのです。

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