女性地方議員襲う「有権者ハラスメント」の壮絶 街頭演説中に「説教」、告白断られて嫌がらせ…

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地域社会からの支援を得にくい状況もある。男性議員の場合は、出生地と選挙区の一致割合が8割近い一方で、女性議員で一致している割合は3分の1のみであることが、1996年の竹安栄子氏の研究で指摘されている。これは、女性は夫の地元に嫁いだり、夫の転勤で移動したりすることが影響している。結果、特に初立候補する無所属の女性議員の場合、後援会等の支持基盤を持たない場合が多い。

それでも地方議会の場合、自分の属性に近い人に投票する傾向があり、女性は比較的当選しやすいと指摘するのは、2011年から川崎市議会議員を2期務め、現在は官民共創を掲げるPublic dots & Companyの取締役を務める小田理恵子氏だ。

「ただ、地盤がない場合、大きく違うのは当選後。投票した人と接点がないので政治活動を応援してくれることはありませんが、地盤があれば応援してもらえる。そこで地盤がない女性は外に向かって障壁を作らず、広く対話をして支援を広げようと考えます」

支援者を名乗って「つきまとい」まがい

実際、2010年の『地域社会における女性と政治』(東海大出版会)によると神奈川県下の市議会議員306人(男性236人、女性70人)から回答を得たアンケート調査では行事やイベントに参加する議員は男女でほぼ同じ割合だったが、ホームページでの議会報告や活動報告、街頭駅頭でのあいさつ、住民からの相談を受けるなどの活動は女性議員のほうが活発に行っていた。

足りない地盤を、支援者を獲得することで埋めようとするわけだが、これがハラスメントにつながっている場合がある。政党の後ろ盾がないうえ、秘書がいる国会議員と違いすべてを自分で対応しなくてはならない野党の50歳以下の女性地方議員で、最もハラスメントを受けているのは1期目なのだ。

支持基盤も固まっておらず、公人という意識もあって有権者をブロックできないと考えている議員もいるからだろうか、女性地方議員を、手近なアイドルや、自分の承認欲求を満たす存在とみなすような人を呼び寄せてしまうこともある。

そうした人の中には支持者や支援者を名乗ってくる人も多い。選挙ボランティアとして集まった男性に自宅の前で待ち伏せされたり、毎日手作り弁当にメッセージを添えて告白され、それを断った結果、選挙に必要な資料その他を廃棄されて警察沙汰になったケースもある。

熱烈な賞賛のメールを送り付けた後、自分の意に染まない行動をした、すぐに返信がなかったなどといった理由から手のひらを返し、今度は「お前なんて人間のクズだ」といった長文メールを1時間に数件のペースで送り続ける例もあった。選挙区に関係なく、女性議員だけを支援するという名目で付きまとう人も少なくないという。

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