国連事務総長選に立候補した「34歳女性」の正体 負け覚悟で立ち上がった「移民の孫」の狙い

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かねてより不透明だった事務総長の選出方法に光が当てられたからである。主に密室でのやりとりで事務総長が決まっていた昔に比べれば、確かに選出プロセスの透明性は高まった。それでも、今年10月には現職グテーレスの2期目続投が決まるとの見方がもっぱらだ。

アローラによれば、彼女が伝えようとしているメッセージはこうだ。国連は硬直化していて、無駄が多く、迷走し、上から目線で、若手職員に見下した態度をとっている——。その国連は全世界で4万4000人の職員を抱える。

アローラが選挙活動のためにユーチューブにアップした動画によると、国連の年間総収入はおよそ560億ドルだが、実際の活動に使われる金額は1ドルあたり29セントほどにしかならない。

国連開発計画(UNDP)の監査人を務めるアローラは「会議や報告書の作成に資源が浪費されている」と話す。「どれも宣伝目的の、うわべだけの活動だ。私たちは国連の存在意義、国連の本分を見失っている」。

これが民間企業だったら「とっくに倒産している」とアローラ。

大胆な異議申し立て、潜在的支持者は多い

友人や支援者は、彼女の挑戦を身の程知らずで、ばかげたものとは見ていない。本音を口にできる度胸はたいしたものだと尊敬のまなざしを向けている。

「彼女は恐れを知らない」と語るのは、国連人口基金(UNFPA)に勤務し、2019年にアローラと働いた経験のあるポーリン・パメラ・プラットだ。「たとえ自分より権威ある人たちに囲まれていたとしても、彼女は自分自身であることをおそれない」。

国連事務総長には確かに大きな権威はあるかもしれないが、権限はほとんどない。安全保障理事会の5つの常任理事国(イギリス、中国、フランス、ロシア、アメリカ)が拒否権を握っているからだ。事務総長の選出にも決定的な影響力を及ぼしているため、事務総長となる者は基本的にこれら5カ国に借りを作ることになる。

「彼女には勝ち目がないし、それは本人も承知だろう」と、元国連職員のエドワード・モーティマーは話す。1997〜2006年に事務総長を務めたコフィー・アナンの首席スピーチライターだった人物だ。「彼女は大胆なやり方で国連に対する不満を示した。それが職員の間で広く共有されている不満であることは間違いない」。

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