駅に空襲跡、地下鉄に刻まれた「戦争の記憶」 「幻の新橋駅」は戦時中に一度復活していた

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戦前に8カ月だけ使われた地下鉄銀座線新橋駅の「幻のホーム」(撮影:尾形文繁)
地下鉄銀座線の新橋駅に存在する「幻のホーム」。戦前にわずか8カ月しか使われなかったこのホームは、現在の銀座線を建設した2つの鉄道会社、東京地下鉄道と東京高速鉄道の地下鉄構想が衝突した結果生まれた「仮設の駅」と言われてきました。
本当にやむなく作った仮設駅だったのか――。鉄道ジャーナリスト、枝久保達也さんの著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』はこの「神話」誕生の経緯を解き明かすとともに、両社の対立が遠因となって成立した帝都高速度交通営団(営団地下鉄、東京メトロの前身)の戦時下の姿を描いています。
銀座線銀座駅では近年、リニューアル工事に伴って戦争中の空襲被害の跡が姿を現したことが話題となりました。1945年1月27日の「銀座空襲」と当時の地下鉄について、同書から一部を抜粋(一部再構成)してご紹介します。

銀座駅出入り口真横に落ちた爆弾

地下鉄もまた銀座空襲の被害を免れることはできなかった。250キロ爆弾が鳩居堂の前、現在の銀座駅A2出入り口の真横に落下したのである。

危惧されていたとおり、頑丈な鉄骨鉄筋コンクリート造りのトンネルも上空から垂直落下する爆弾の前には無力だった。道路には大きなクレーターができ、破壊された水道管から水が噴き出して、トンネルに開いた大穴から駅構内に流れ込んだ。交通営団の災害報告書は次のように記録している。

銀座新橋寄西側出入口付近約三メートルの箇所に爆弾落下し、線路構築上部まで到達して爆発せるものの如く。路面に穿たれたる漏斗孔は径約十五メートル深さ約五メートルにして、前記駅出入口の路面近くは破壊され、下部階段には亀裂を生じ、鉄骨鉄筋コンクリート構築には幅二・八メートル、長さ約三メートルの孔を生じ、鉄骨コンクリート桁を折損の上、構築上部に敷設しありたる水道鉄管(内径八百ミリ)も同時に破壊され、大量の水は放出し土砂と共に隧道内に流入して延長約四十メートル余線路を埋没す。浸水は逐次増水し十七時頃には京橋駅まで浸水し軌条面二十五センチに達す。
(種村直樹『地下鉄物語』日本交通公社出版事業局、1977年、106―107ページ)
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