コロナ倒産「これから急増」という最悪シナリオ 資本増強で残れる会社と倒れる会社に分かれる

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経営陣は、資本増強策の検討を急いだ。米山久社長が個人で10億円を出資することは決めていたが、外部の出資者探しにも奔走した。

「公募増資も検討したが、どれだけ集まるかが読めなかった。そのためスピード感があり額も読みやすい第三者割当増資に踏み切った」とエー・ピーHD幹部は明かす。

両社は資本増強によって生き残ることができたが、長引くコロナ禍で、命尽きる企業は増加している。東京商工リサーチによるとコロナ関連倒産は2月26日時点で累計1108件。2021年2月は122件と月間の最多記録を更新した。

ただ、企業倒産件数全体は意外に増えていない。2020年の倒産件数は2019年比7%減の7773件で、1990年以来の少なさだ。

低水準にとどまっているのは、政府が持続化給付金をはじめとする支援策を打ち出しているからだ。そして、無利子・無担保融資も大きい。全国信用保証協会連合会によると、昨年12月末時点で累計184万件、32兆4564億円にも及んでいる。こうした支援策により、企業が延命しているのだ。

だが、支援策がいつまでも続くわけではなく、追加で借りることができない企業も増えている。帝国データバンクの赤間裕弥情報部長は「コロナ融資はおよそ半年分の運転資金として執行されているため、多くの企業は昨年12月末で一巡している。経済が回復しなければ債務超過に陥る企業が続出する」と分析する。

不良債権ファンドも台頭

倒産が急増し、不良債権が増加する──。そうした事態を想定し、動き始めたプレーヤーたちも増えている。アメリカの投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下の豪ペッパー・グループは債権回収会社を買収、1月から日本における不良債権ビジネスに参入した。

狙っているのは、地方銀行が抱える案件。地方には、事業としては有望なものの過剰債務で苦境に陥っている企業が少なくない。しかし、地銀には企業再生のノウハウがない。そこで債権者からディスカウントして債権を買い取り、非中核事業を売却させるなどしてバリューアップを図る算段だ。

国内資本のニューホライズン キャピタルも、地銀や信用金庫を中心とした金融機関から不良債権を買い取るファンドを立ち上げる。地銀を中心に200億~300億円の出資を募って設立、1000億円規模の不振企業向け債権を買い取る構え。いずれも、今後、苦境に陥る企業が増え、倒産が急増することを見越しているのだ。

1都3県では緊急事態宣言が延長されるなど、新型コロナの影響は一向に沈静化の兆しが見えない。そうした中で「コロナ倒産」急増のカウントダウンが始まっている――。

『週刊東洋経済』3月13日号(3月8日発売)の特集は「コロナ倒産 最終局面」です。
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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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