経済悪化に耐えきれず北朝鮮が国境を開放へ 中国・丹東での貿易を本格化させるが人的交流はまだ先

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このような現状において、北朝鮮は経済政策に関して「自力更生」「自立自強」を何回も強調してきたものの、経済活動のすべてを国内資源で賄うことはできていない。コロナ禍には強力に対応したものの、やはり貿易減少によるモノ・外貨不足といった経済的痛手を受けたようだ。

2021年1月の第8回党大会では、金総書記が核兵器の小型・軽量化や超音速弾頭の開発、ICBM(大陸間弾道ミサイル)用固形燃料の開発など軍事面での具体的な開発目標を述べた。そのため、同大会では、核保有・超大国を目指す軍事面でのより踏み込んだ言及の有無に関心が集まっていた。

ところが、党大会の中で行われた「部門別協議会」での金総書記の発言は「軍事開発についての内容は対外的なもので、われわれは何よりも経済の改善に注力しなければならない」などという内容がほとんどだったという。

金総書記直属の経済機関を新設

北朝鮮内の国営企業などが国に上納する負担金の額は、2020年に前年比8割近く減少したという指摘もある。北朝鮮国内の工場などの生産量も、2019年比で2~3割程度がやっとだったという声さえも聞こえてくる。

そのため、党大会を前後して、金総書記は主に中小企業レベルの機関の経営へのテコ入れを図るため、「経済貿易連合社」なる名称の機関を立ち上げ、直属にしたという。日頃の経営状況を把握・支援する一方で、金総書記が目指す不正・腐敗撲滅にも目を光らせる目的だとされている。同時に、上納金などの負担金も軽減する方針のようだ。

ただ、今回の国境の小さな開放は、あくまでも物資のみで、依然として規模は小さい。コロナ禍の影響を恐れ、人的交流の再開時期はまだ不透明だ。「中国側の防疫体制も厳しく、生活必需品を中心とした国境を挟んだ密貿易さえできない状況」(北朝鮮と取引のあるビジネスマン)が現状のようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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