「白い恋人」石屋製菓のパンケーキが行列のワケ 創業70周年を迎え「東京」で勝負に打って出た
しかし一口食べてみると、この味にこそ評判の理由があるとわかる。
生地は弾力があるものの、口に運ぶとほろっとほどけるほどやわらかい。それに、焼きたての温かさと、冷たい生クリームの相反する感触が舌を喜ばせる。生地やクリームの素材を生かすためか、甘味はごくごく控えめ。ただ、やはりミルキーな甘さがあり、白い恋人を彷彿とさせる。
ストロベリー、ショコラのほか、2020年の11月に、生地と生クリームだけの「プレーン」がメニューに加わった。純粋にクリームと生地を味わいたいというお客の声に応えてのことだそうだ。
つまり、繊細な食感がこのスイーツの本当の魅力を作り出していると言える。そのためか、仕込みに手間がかかり、1日に80個が限度だそうだ。
「シンプルな素材で構成されているからこそ、作り手の技術を要します。また、手順どおりに作ってもうまくいかないことも多いです。その日の湿度、気温といったものに素材の状態が左右されるわけですね」(米山氏)
同店のスタッフ15名中、パンケーキ製作に習熟したスタッフは3名なのだそうだ。しかし、同社のチャレンジ精神、そしてプライドが込められているスイーツなのだから、簡単に作れないのはむしろ当たり前と言えるだろう。
「コンセプトは、『職人のレシピ』です。お菓子屋が出すスイーツとして、当社の開発トップであるシェフパティシエが試行錯誤を重ねました。目指したのは、見て驚いて、食べて驚くようなスイーツです。また、北海道でしか白い恋人が買えないのと同様、“不便性”を大事にしています。カフェに来ていただかないと食べられず、またお持ち帰りもしていただけません。そんな特別な商品、場所としてイシヤを位置づけていただきたいという気持ちを込めています」(米山氏)
さまざまな変革は現会長のチャレンジ精神がルーツ
なお、カフェ事業については北海道内ではあるが、すでに2013年からイシヤカフェとして展開。イシヤ日本橋で提供されているパンケーキはそのうち、千歳空港のカフェでも味わうことができるという。
カフェは、3代目である石水創社長が、就任時に「日々、お客様にとって身近に感じられる存在でありたい」として立ち上げた事業なのだそうだ。
高級洋菓子への転身や、白い恋人パークの立ち上げといったさまざまな変革を行ってきた、現会長石水勲氏のチャレンジ精神が受け継がれていることを示す。
北海道外での今後を聞いたところ、ほかの飲食業と同じくコロナの影響を受けており、店舗展開のはっきりとした見通しは立っていないとのことだ。しかし困難を切り抜けようとする時代にこそ、躍進のチャンスがある。70年の伝統を背負った同社にとって、今が勝負のときと言えそうだ。
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