オレンジと紺「近鉄特急12200系」惜しまれ引退 令和の新車、名阪特急「ひのとり」にバトン託す
一方で、走行機器では大きな進化はなく、12200系ではモーターのない車両のブレーキにディスクブレーキを採用したことが改良点だ。また、青山峠に介在する33‰(パーミル)の上り勾配(水平距離1kmで33m登る)を時速110kmで走行可能な性能を持つが、これは先輩格の車両から引き継いだもので、基本的な搭載機器は1980年代に作られた特急車両まで、細かな改良を重ねながらも同形のものが継承されている。
近鉄では、沿線に伊勢神宮があるために要人の利用もあり、いわゆる「お召し列車」も運転されるが、12200系も最新型車両だった頃はお召し列車にも使用された。1971年・1974年・1975年には12200系を使用したお召し列車が運転され、昭和天皇・香淳皇后が利用されたほか、1975年にはイギリス・エリザベス女王夫妻も12200系に乗車された。いずれも運転に際し、既存の座席を撤去して床にカーペットを敷き、専用の座席を設けていた。
以後のお召し列車は後継の新型車両などに引き継がれ、現在はしまかぜの50000系が使用されている。なお、年始に行われる総理大臣の伊勢参宮参拝では、既存の近鉄特急に増結または一部を貸し切りとした形で運転され、車両は都度異なっているが、2021年年始の運転は延期された。
近鉄最後の喫煙車両
2020年1月23日付記事(新幹線に近鉄…座席で喫煙できる列車が消える)でも触れたが、近鉄特急には根強い喫煙需要がある。分煙化の進んだ現在では喫煙ルームを設けた車両が運転されているが、ここ数年で一気に整備が進んだ。だが、12200系では置き換えの計画があったことで喫煙ルームの設置はなく、最期までたばこが吸える車両が残り、名古屋寄りの先頭車(1号車)などが喫煙車両として設定されていた。
2020年2月には喫煙ルームを除いて全面禁煙となったが、それまで喫煙車両として使用されていた車両は座席販売を一旦中止し、引退させる車両を除いて車内の整備が行われた。
全面禁煙の実施後だが、筆者は車内の整備を行った元喫煙車両の客室に入ったことがある。荷棚にあった空気清浄機が消えた車内から、一瞬タバコのにおいがしたが、すぐに慣れてわからなくなってしまった。
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