オレンジと紺「近鉄特急12200系」惜しまれ引退 令和の新車、名阪特急「ひのとり」にバトン託す

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さて、近鉄の新形名阪特急用の80000系に「ひのとり」という愛称があるように、12200系には「新スナックカー」という愛称があった。

スナックカーとは、近鉄特急の車内に「スナックコーナー」と呼ばれるカウンターを設けて軽食や飲料の提供を行ったもので、運営を担当した名古屋都ホテル(当時)の名前を取って、このカウンターを「みやこコーナー」とも呼んでいた。

近鉄では、現在も観光特急「しまかぜ」で軽食類の提供を行っているが、そのサービスの簡素版を名阪特急などで行っていた時期がある。12200系ではスナックコーナーというカウンター部分を拡張した改良形ということで新スナックカーという愛称が付き、立席ながらカウンター脇で提供された料理・飲料を口にすることもできた。

12200系では12345という車両が存在したが、2020年に廃車された(筆者撮影)

だが新スナックカーとしてカウンターを設けたのは最初の20編成分だけで、あとの増備車はスナックコーナーと呼ばれたカウンターをやめ、一般の客室にしたので、実際には「スナックなしカー」となってしまった。

近鉄では、短い編成を組み合わせて列車を仕立て、柔軟に輸送力を調整する形で運転していたので、スナックコーナーが大量にあっても仕方がないのと、2021年に小田急の特急ロマンスカーで車内販売をやめてしまうように、当時でも食堂車などが縮小傾向にあった。その一方、乗客を立席で乗せなければならないほど需要が旺盛だったので、スナックコーナーがあった車両も後に客室へ改造され、新スナックカーとは名ばかりの車両となっている。

「インバウンド誘致」の先駆け

スナックカーでは、座席にリクライニングシートを導入し、座席の間隔も広げるなど、居住性を高める取り組みも実践された。さらに12200系ではトイレを拡張し、和式トイレに加えて新たに洋式トイレを設けている。

名阪特急が走る大阪―名古屋間は東海道新幹線と競合しているが、12200系が登場した頃は、東海道新幹線の躍進で名阪特急の乗客が奪われたとされる時代だった。この対応として、近鉄では東海道新幹線の開業を逆手に取り、新幹線利用の外国人客を奈良・伊勢・志摩などの観光地に呼び込む戦略を採った。この一環として洋式トイレの設置となるのだが、昭和の特急車両では新幹線や国鉄特急のグリーン車に当初から洋式トイレを備えていた程度だったので、当時としては先進的なものだった。

ただ、実際には高度成長期の全体的な底上げがあり、利用者が増え続けて特急の増強に追われる結果となっただけに、杞憂の類となるだろう。

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