「数学嫌いの若者」が生みだされ続ける根本原因

小学校時代の算数の教え方がその後を左右する

小学校の算数教育で必ず登場することに「九九」がある。3×4=12の「サンシジュウニ」ならば、3+3+3+3=12を示した後に暗記させるものである。ところが、困った指導が一部で行われて、3×4=12のような意味を示す前に九九を全部暗唱させていたのである。

今年度の本務校ゼミナール学生もそのような指導を小学校で受けた思い出が鮮明に残っていて、「なんの言葉なのかサッパリわからないまま、ただただ暗記させられました。疑問に思って学習塾に通っていた友人に尋ねたところ、3×4=12の意味があって「サンシジュウニ」があることが納得できました」と説明したのである。

筆者は「九九の暗記は大切」という考えをもっている。しかし、九九を導く式の理解を省略して覚えてもつらい気持ちしか残らないことは明らかである。

「比と割合」の意味を理解していない

また、算数の教育で最も重要と考える「比と割合」すなわち「%」の概念の教育では、「基準とする対象を1あるいは100%とすると、比べられる対象はどのくらいになるか」という理解がまず大切であるものの、そのような理解を省略して、それらの関係式の暗記だけの教育が広まっている。

これに関しては学習塾関係者も危惧の念を述べているが、以下のような呆れた事実が結果として表れている。暗記だけの学びは忘れるのが早く、一旦忘れると手も足も出ないことに注意したい。

2012年の全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)に出題された小学6年生対象の問題で、「赤いテープの長さは120cmで、赤いテープの長さは白いテープの長さの0.6倍」を示す図を選ぶ4択問題の正解率が34.3%であった。

2012年度の全国学力テストから加わった理科の中学分野(中学3年対象)で、10%の食塩水を1000グラムつくるのに必要な食塩と水の質量をそれぞれ求めさせる問題が出題された。

これに関して、「食塩100グラム」「水900グラム」と正しく答えられたのは52.0%にすぎなかった。1983年に、同じ中学3年を対象にした全国規模の学力テストで、食塩水を1000グラムではなく100グラムにした同一の問題が出題され、この時の正解率は69.8%だった。

理解を無視した暗記だけの算数・数学の学びは中学や高校でもますます盛んになっている(拙著『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)参照)。背景には、社会全体に「結果さえ良ければそれでよし」というプロセス軽視の風潮もあるだろう。それが算数・数学の学びの世界にも浸透してしまったと考える。かつて、「算数・数学は最後の答えが合っても途中の式をしっかり書かなくてはダメ」と散々言われた時代を懐かしく思い出すのである。

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