「アップルカー」の成功が難しいと言える理由 i Phoneのような世界標準になるための課題

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いずれにしても、自動車メーカー各社のEVパッケージをそのまま使うとなると、アップルというブランドだけで、今後激しさを増すEV市場の中でアップルカーを差別化するのは難しいとも思う。

また、自動運転技術についても、ファブレス化によるアップルカーの差別化は難しいという印象を持つ。

自動運転技術で必要とされるハードウェアは、車載側ではカメラ、ミリ波レーダー、レーザーレーダーなど数種類のセンサー、また道路インフラ側にも同様の各種センサーを要するが、ここにアップルが直接介入するとは考えにくい。

アップルにとって有益なのは、自動運転技術を搭載した車両と、車両の利用者から得られる多種多様なデータである。

データプラットフォームでマネタイズできるか?

こうした自動運転技術データの収集と解析については、アメリカ・インテルとその子会社であるイスラエルのモービルアイや、メルセデス・ベンツと技術連携しているアメリカ・エヌビディアなど、画像認識技術を基盤として新たなるマネタイズを模索している半導体関連企業にとって極めて重要な領域であり、ここにアップルが絡める余地はほとんどないと考えられるからだ。

また、車載データ全体を見ると、グーグルはインフォメーションとエンターテインメントが融合したインフォテインメント領域で、アンドロイドの車載OS(オペレーティング・システム)のシェア拡大を進めている。

Android車載OSを採用した「Polestar 2」のインフォテインメント(写真:Polestar)

さらに、グーグルは2019年秋ごろから、世界各地のIT系イベントで、アンドロイド車載OSが関与する領域を、インフォテインメントの枠を超えて、自動運転やパワートレインの制御など、クルマの動力性能に関わる分野まで拡大することを目指すと表明している。

一方のアップルの場合、現状で車載器との関係は、i Phoneの連携を行うCarPlayに限定されており、アップルカーの車載OSをどう設計するのかによって、車載データのマネタイズ戦略が大きく変わるはずだ。

以上のように、「将来のクルマはi Phoneのようにアップルが主導権を握る」という予測を立てるには、多くのハードルがある。それでもなお、アップルがアップルカー量産を進める場合、どのようにしてクルマのアップルワールド化を実現するのか。アップルカーの今後について、引き続き注視していきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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