「アップルカー」の成功が難しいと言える理由 i Phoneのような世界標準になるための課題

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“普通のクルマ”とは、大手メーカーが企画・開発・製造し、正規販売店を通じて販売され、消費者が十分な保証を受けられる、ということだと筆者は考えている。

日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」の登場によって、世界的なEV市場の基盤ができたことで、その後のテスラの飛躍や、中国政府の国家的な電動化戦略に下支えされた中国EVベンチャーの成長につながった。

ただし、EVの大量生産を安定的に維持するためには、各社ともかなり苦労した。例えばテスラの場合、旧トヨタ・GM合弁工場を買収してEV生産ラインに改修したが、安定した生産体制となるまで数年を要した。

また、日産の場合、追浜工場での最終組立作業でこそ大きな課題は発生しなかったが、電池開発で課題があった。

数々の課題が残したもの

NECトーキンなどと共同で立ち上げた、リチウムイオン二次電池の開発・製造企業であるAESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ:現在は中国資本でエンビジョンAESC)では、当初、電池の歩留まりが悪く、他社でリチウムイオン二次電池の開発や生産に携わった人たちが応援にかけつけるなど、紆余曲折があった。

その他、ヨーロッパでは、BMWが2010年代前半にドイツ・ボッシュと韓国・サムスン電子の合弁企業であるSBリモーティブにリチウムイオン二次電池の開発・製造を委託するも、ボッシュとサムスン電子との折り合いが悪く、合弁事業は解消された。

ここで培われた基礎技術は、その後、ボッシュとサムスン電子それぞれのEV関連技術に応用されている。

アメリカでは、GM(ゼネラルモーターズ)が、プラグインハイブリッド車の「ボルト」向け電池の製造で、韓国・LG化学にアメリカ国内での生産工場立ち上げを依頼するなど、韓国の電機産業によるリチウムイオン二次電池開発が進み、その技術が地元韓国のヒュンダイグループの電動化戦略「IONIQ」に結びついた。

ヒュンダイが2021年1月に公表した「IONIQ 5」のティーザーイメージ(写真:HYUNDAI)

こうして、EVに関する各方面のこれまでの経緯を踏まえると、アップルがヒュンダイグループや日産にアップルカーの製造を依頼するのは、これまでEV生産に携わってきた人たちにとっては納得のいくことだろう。

ただし、量産効果によるコストパフォーマンスを考慮すると、直近ではGMやトヨタのEVパッケージも、アップルにとっては興味があるはずだ。GMがホンダ向けなどに開発した「アルティウム」、そしてトヨタがスバル向けなども含めて開発した「e-TNGA」のことだ。

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