静岡リニア批判、隣県・市町と比べ際立つ過激度 「ゴールポスト」動かしてJR東海を封じ込め
大井川の水が県外に流出すると中下流域の利水者が不利益を被りかねないという理由から、静岡県の川勝平太知事は「1滴も譲らない」と反対する。しかし、JR東海は、県内のほかの工事区間から導水路トンネルを使って大井川に戻す水の量が山梨県側に流れ出る量を上回るため、中下流域の河川流量は維持されると説明した。
また、中流から下流にかけての河川水量は年間約19億トンで年によってプラスマイナス9億トンの変動があることから考えると、県外への流出量は全体から見れば誤差の範囲といってもよい。
委員からは、工期が延びるリスクや工期が渇水期と重なった場合のリスクを懸念する声が上がったが、有識者会議の座長を務める福岡捷二・中央大学教授は「パズルのピースが埋まってきた」と発言、今後の方向性を示す「中間取りまとめ」の作成もほのめかした。会議の内容を総括する座長コメントでは、「河川流量は維持される」ことが確認されたとして、今後、追加データの提示をJR東海に要求した。
「重大な問題」副知事の指摘
水資源問題の解決に向かって大きく前進したといえる今回の有識者会議だったが、会議終了後の記者会見で、オブザーバーとして会議を傍聴していた難波喬司副知事がかみついた。「JR東海の資料と座長コメントとそれについての国交省の解釈には重大な問題がある」。
難波副知事の説明によれば、導水路トンネルから地下水を強制的に出すのだから上流にある排出口での流量は増えるが、その分、下流に行くほど地下水が減る可能性があるという。「下流側の河川流量が維持されるという説明は正確性を欠き、納得できない」と、難波副知事は述べた。
「オブザーバーなので本来は発言すべきではないが」と、自身の立場をわきまえていた難波副知事のあえての発言には重みが感じられた。ただ、記者会見終了後に、有識者会議の事務局を務める江口秀二技術審議官に「難波副知事の発言は事実か」と尋ねると、「話を聞いたばかりなのでなんとも言えないが、過去に議論済みなのではないか」とのことだった。
地下水の流れだけを見れば、難波副知事の指摘には説得力がある。しかし、昨年10月27日に開催された第6回有識者会議において、大井川中下流域の地下水は大井川の河川水や現地への降水なども供給源であり、上流の地下水だけから供給されているわけではないことが委員の間で確認されている。それを承知した上で発言しているとしたら、難波副知事が有識者会議の議論に不信感を抱いているのは明らかだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら