「鬼滅」や「Fate」はなぜ、東京MXを選んだのか

弱小局がキー局に勝るアニメ強者になるまで

東京MX発で大ヒット作を生めると証明できたことに加え、同社が誇る「圧倒的なアニメ枠の量」も作品が集まる理由の1つとなった。在京キー局は視聴率を重視するため、老若男女さまざまな視聴者層に支持される番組を放送することを重視する傾向がある。そのためコアなファンがいる一方で他番組と比べターゲットが絞られるアニメ作品の放送枠は、多くても週に2〜3本程度とするのが一般的だ。

北澤局長は今後自社発の大ヒット作を生み出したいと意気込む(写真:東京MX)

だが東京MXはもともと規模が小さいがゆえにこの限りではなく、「思い切った編成を行える」(北澤氏)。現に2021年の1~3月、東京MXで放送しているアニメ作品は約40に上る。新作だけで1日約5作品を毎週放送している状態だ。

放送枠自体を豊富に用意することで、今までは放送できていなかったニッチな作品も果敢にチャレンジすることができるようになった。すると、他社と比べ一定期間にヒット作を生める確率も高くなる、という好循環ができあがった。

キー局で放送するより「安上がり」

さらに多くのアニメ関係者は、東京MXで作品を放送する利点として、「局印税」と呼ばれる費用が発生しない場合が多いことも挙げる。

局印税とはテレビ局でアニメを放送する際、テレビ局側が「放送がアニメの宣伝になっている」などという理由で製作者側に支払いを要求する費用だ。アニメの製作委員会は、放送する時間帯のテレビCM枠をテレビ局から買い上げることが一般的。そのため、こうしたCM買い上げに加えて、さらに支払いを求められることになる。大手製作会社の幹部からは「(CM枠をすでに買い上げているのに)なぜ追加で費用を支払う必要があるのか納得がいかない」という不満の声も聞こえてくる。

東京MXのアニメ放送では、キー局のような局印税を取らないケースもあり、CM枠の買い上げのみで済む場合が多い。そのためアニメ製作委員会にとっては、キー局で放送するよりも安上がりというわけだ。

アニメ出資に携わる広告代理店首脳の一人は「アニメにはコアなファンが多く、キー局であろうと(東京MXのような)独立局であろうと関係なく観てもらえる」と語る。コアなファンに届けば、大きな収益源となるDVDやグッズ、配信などの収入獲得にも十分つながる。そうした判断もあり、東京MXに有力作品を供給する流れができあがった。

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