ドコモ「脱自前主義」で次に攻め入る新たな分野 新料金プラン「ahamo」は予約者100万人で手応え

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年明けに報じられた三菱UFJ銀行との提携交渉はどんな形で合意に至るのか(撮影:尾形文繁)

12年間続いた顧客流出に歯止めをかけた。NTTドコモは2月5日、上場廃止となってから初めてとなる決算を発表し、2020年12月にモバイルナンバーポータビリティ(MNP)による携帯契約者の転入数が転出数を上回ったことを明らかにした。これは実に2009年1月以来のことだ。

決算会見で井伊基之社長は「既存プランの『ギガホ』や『ギガライト』の販促を昨秋からドコモショップで強化したのに加え、新プランの『ahamo(アハモ)』開始を前に流出が抑制された」と契約者数の純増の理由を説明。この1月も同様に転入が転出を上回ったという。

国内通信大手3社の決算が出そろったが、四半期ごとの契約数の純増減(前年同期比)を見ると、ドコモは純減幅を大きく縮めたが、KDDIとソフトバンクは純増を維持している。純減拡大を食い止めたとはいえ、ライバルに追いついたとまではいえない。

この差を縮めるためにドコモが繰り出したのが新プランのアハモである。データ量20GBで通話1回5分無料がついて月額2980円、オンラインでのみ契約が可能な若年層向けプランだ。サービス開始は3月26日を予定する。アハモは2月5日時点で事前予約者数が100万を突破。1カ月前が約55万だったことを考えれば、順調に伸びたといえる。

金融サービスに強化の余地がある

アハモ予約者の流入元について井伊社長は、「ドコモユーザーと他社ユーザーで比べると、比率は非開示だが、若干ドコモ内からの移行が多い」と明かした。つまり、50万弱は他社から奪い取ったわけだ。アハモ発表当初から若い世代の取り込みを強調していたが、「100万のうちほぼ半分が20~30代で想定したとおり。ドコモの従来ユーザーの比率と比べると倍の水準だ」(井伊社長)と満足げだ。

昨年の値下げの影響で通信事業が減益となる一方、増益に貢献したのがスマートライフ領域だ。ドコモの第3四半期(2020年4~12月)決算でスマートライフ領域の営業利益は前年同期比で約3割増の1778億円となった。その中心が金融だ。クレジットカード「dカード」の取扱高は前年同期比28%増、スマホ決済「d払い」は同2.2倍となった。金融・決済取扱高は第3四半期時点で約5兆円となり、2021年度に6兆円という目標の前倒し達成も視野に入ってきた。

ただ、井伊社長は「金融サービスにはまだまだ強化の余地がある」と述べ、提携を積極化すると強調した。三菱UFJ銀行との提携交渉も報じられたが、「他社との提携についてはしかるべき時期に発表する」と述べるにとどめた。次に繰り出す一手として金融は大きなポイントになる。

2月1日には出前・宅配サービスの「dデリバリー」を今年6月に終了すると発表。ドコモは「d」がつくさまざまなサービスを展開しているが、「負けているものは撤退も含めて検討する。すべて自社でやるのは無理」(井伊社長)。料金値下げで先制攻撃を仕掛け、選択と集中そして提携拡大で新たな強みを構築する。ドコモの戦略は早くも次のステージに移行しそうだ。

東洋経済プラスの連載「反撃のNTT」ではNTTドコモ社長含む、グループ6社のトップインタビューを配信しています。
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NTT社長「“ゲームチェンジ”すればGAFAは脅威じゃない」
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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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