世界の航空会社、抜き差しならない切迫事情 ワクチンに過剰な期待、需要回復は2022年以降

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新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった昨年末は、人々の間に明らかな高揚感があった。旅行関連のウェブ検索が増え、航空会社は運航再開への楽観を強めた。欧州最大の格安航空会社ライアンエアー・ホールディングスは、「ジャブ&ゴー(ワクチンを打って出かけよう)」というキャンペーンまで始めた。

多くの航空会社はあと数カ月分の手元資金しかない

現実はそうではない。

まず、ワクチン被接種者が発症するリスクは低下するとしても、他人への感染を防ぐかどうかは明らかでない。感染力が強い変異株への効果も証明されておらず、オーストラリアや英国などは変異株の流行を受け、国境管理を緩和するどころかむしろ強化した。旅行需要を冷え込ませている自主隔離の義務付けに代わり、航空会社はデジタルヘルスパスポートの導入を呼び掛けているが、問題が多く、世界保健機関(WHO)の支持も得られていない。

航空機は封止され、保管施設に駐機(オーストラリアのアリススプリングズ、昨年10月)写真家:デビッドグレイ/ブルームバーグ

こうした暗い現実により、世界的に旅行が大きく回復するとしても2022年以降だろうと、見通しは後退した。多くの航空会社はあと数カ月分の手元資金しか残っておらず、それでは手遅れかもしれない。すでに1年近く業務から離れているパイロットや客室乗務員、空港従業員ら数十万人が職を失うリスクがある。世界全体がつながっていた時代は戻らず、ばらばらで孤立した状態は長引く様相だ。

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