「若返る」箱根登山鉄道、残りわずかの旧型車両 「109号」が3月に引退、レトロな電車3両のみに

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長年整備に携わってきた同社鉄道部検車区の中老雅明区長は、旧型車両について「新しいタイプの車両と違い、回路がシンプルで故障しても発見がしやすい。古い車は油を差すなど手を入れる部分が多く、保守するのが大変だが、直した分だけしっかり走ってくれるので愛着がある」と語る。

運転士からは「手動でノッチを入れて自分が考えた通りの加速ができ、ブレーキは滑りやすい場所でも微妙な調整ができる」といった声があるようだ。

大きな窓が特徴の3100形「アレグラ号」。左奥は引退したモハ2形110号=2017年4月(記者撮影)

同社ではこのところ車両の世代交代が進んでいる。2014年11月に25年ぶりとなる新型車両3000形「アレグラ号」が登場。沿線の景色が楽しめる大型の展望窓を備えたデザインは、小田急ロマンスカーと同じく「岡部憲明アーキテクチャーネットワーク」が手掛けた。同社初のVVVFインバータ制御装置やLED照明なども採用した。

2017年5月には連結部分に運転室がなく、急曲線を通過する様子が大型窓から楽しめる2両固定編成の3100形アレグラ号がデビュー。さらに2019年に3000形、2020年に3100形を2両ずつ導入した。

旧型車両は次々引退

一方、旧型車両は2017年2月にモハ2形110号、2019年7月にモハ1形103号―107号の2両固定編成が引退した。いずれも譲渡され、107号は地元・小田原の「鈴廣かまぼこの里」でカフェの一部として看板的存在となっている。

主力の1000形・2000形を含め、同社には現時点で25両が在籍。編成が8本作れるが、余った1両を留置しておくスペースが必要となる。そのため109号は定期検査を前に引退することになった。車体は解体して部品を旧型3両の予備として活用する見通しだ。残る旧型車両は部品が調達できる限り走らせ続けられるというが、乗り場との段差があってバリアフリーに対応できない問題もある。

「109号は思い出深い車両」と語る検車区の中老雅明区長(記者撮影)

109号は3月21日の引退に向け、2月13日から特製の方向板を付けて走り、2月20日以降は車内で写真展示をする。新型コロナウイルスの感染拡大により記念イベントの実施は未定だ。

検車区の中老区長は「109号は最初にATSを取り付ける改造工事をした車。苦労して手を入れてきた先輩たちとの思い出が深い」と振り返る。先人から引き継がれてきた109号は箱根登山鉄道の歴史の生き証人のような存在。花道を飾るラストスパートは穏やかに見送りたい。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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