日経平均「3万円突破」がそう簡単ではない理由 今後の株式相場で重要になる「3つのポイント」

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つまり新型コロナ感染状況が好転し、宿泊・飲食業で発生した失業者の多くが職を取り戻すなら、失業率は急低下する。失業率の精緻な予測は難しいが、仮に宿泊・飲食業に従事していた(現在失業中の)約380万人が職を取り戻せば、失業率は4%以下に低下し、ほぼパンデミック前の水準に戻ることになる。新型コロナ感染状況に好転の兆候がみられ、経済の正常化期待が膨らむと、金融市場参加者は一気にFRBの出口戦略を織り込みにいくのではないか。

新型コロナ感染状況の好転と、経済活動再開の時間軸を読む観点から注目すべきは、イスラエルの新型コロナ感染状況である。欧米各国のワクチン接種率が「1桁パーセント」にとどまるなか、イスラエルの接種率は40%超と群を抜いて高水準にあり、先行指標として注目される(出典はOur World in Data、1月23日現在)。イスラエルでは12月19日に接種が開始され、年始時点で約100万人が接種を完了、政府は3月中に接種率が70%に達することをもくろんでいるという。

もっとも、現在のところ新規感染者数や死亡者数といった数値は目立って減少しておらず、死亡者数はむしろ微増傾向にある。ワクチン接種率が40%超に達しているにもかかわらず、感染者数、死亡者数といった数値に大きな変化はみられないことは、感染の封じ込めが一筋縄ではいかないことを物語っている。

FRBが方向転換すれば金融市場の大きな波乱要素に

それでも最近は新規感染者数の伸び率が明確に下向きのカーブを描いている。筆者は、ワクチン接種と感染者数の因果について考察・予想を避けるが、今後、欧米諸国や日本のワクチン接種率が上昇する過程では、イスラエルの事例が参考にされ、金融市場参加者や政策当局者の予想形成に影響を与えるだろう。例えば、ワクチン接種率が〇〇%まで上昇すると、〇〇日経過後に新規感染者数が減少し、〇〇日後に経済活動の制限解除が可能になる、といった具合だ。

イスラエルの新型コロナ感染状況が期待どおり好転した場合、金融市場では世界経済の正常化期待が膨らむだろう。素直に考えれば、景気回復期待から株高要因となりそうだ。

ただし、同時に経済政策の正常化も同時に織り込まれる点に注意したい。特にFRBの方向転換は金融市場の大きな波乱要素になりかねないため、細心の注意が必要だ。金融緩和の度合いが緩まるとの見方からアメリカの長期金利が急上昇すれば、アメリカ株はもちろん日本株への打撃は不可避だろう。目下の株高が「新型コロナバブル」ならばその崩壊は新型コロナ終息と共に訪れるというわけだ。日経平均株価3万円回復を予想する向きが増えているが、そう簡単にはいかないのではないか。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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