日経平均「3万円突破」がそう簡単ではない理由 今後の株式相場で重要になる「3つのポイント」
実際、日銀はコロナ禍が始まった前年の2019年には、買い入れ額を大幅に減額している。年間買い入れ額は4兆3772億円と買入れ目標の6兆円を大幅に下回った。2019年は年間を通じて株価が堅調に推移したため、買い入れの必要性が低下したと判断したのだろう。つまり声明文に記載されている「6兆円」を変更することなく、買い入れ額を裁量的に変更することは可能であり、すでにその実績もあるということだ。
であれば、株式市場のショックを誘発する危険を冒してまでも、政策変更を発表する理由は乏しい。そもそも日銀は物価目標達成のための手段としてリスク性資産を購入しているのだから、物価上昇率が低下している現状、株価上昇を受けて買い入れ方針を減額するのは理に適わない。2019年と同様に「いつの間にか減っている」姿を目指すのではないか。そうであれば、株式市場に与えるマイナスの影響は限定的と考えられる。
アメリカ労働市場は飲食・宿泊業以外は正常化へ
3つの注目点のうち、2つ目はアメリカの労働市場だ。アメリカ雇用統計は平時においても金融市場の最重要指標であるが、今年は特に注意が必要である。というのも「予想外に早い改善」がFRB(連邦準備制度理事会)の金融引き締め観測を惹起する可能性があるからだ。
そこでアメリカ雇用統計で業種別の雇用者数に注目したい。2020年1月時点で11%のウェートを占めていた宿泊・飲食業は4月までに雇用者数が半減した後、夏場は回復傾向をたどった。だが新型コロナ感染状況の悪化を受けて同12月には回復が頓挫した。2020年1月を100とした場合、12月の雇用者数は77.1にとどまる。2021年1月に入った後も感染状況は沈静化しておらず、営業制限の解除には時間を要するとみられることを踏まえると、今後、同セクターの雇用状況はさらに悪化する可能性が高い。
他方、宿泊・飲食業以外の業種では総じて正常化が進んでいる。昨年12月時点の水準は95.8まで回復した。対面型サービスが多く含まれる教育(12月の水準:94.9)、その他サービス(92.5)は回復の足取りが鈍いいっぽう、小売り(97.6)、製造業(95.8)、建設(97.6)、運輸(98.4)、専門職(96.1)は着実な回復傾向をたどり、金融業に至っては99.1とほぼ正常化にメドがついた状態にある。
ちなみに2020年12月の雇用者数は前月比マイナス14万人の減少であったが、その他多くの業種は回復基調が継続していたため、宿泊・飲食業を除いたベースでは約35万人の増加だった。
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