偏差値はとても届いていない。親からみれば、無謀とも思える挑戦にみえたが、2年間勉強を頑張ってきたのは翔馬くんだ。本人の希望を通し、この学校を含め、受験校を決めた。
目標が定まってからの翔馬くんはこれまで以上に頑張っていた。学校から帰宅するとすぐに塾に向かい、受講のない日も夜10時近くまで自習室で勉強した。
しかし、親としては不安だった。本人が本命に据えた学校は偏差値50後半。6年生の5月に偏差値38だったわが子の成績は上がってきているが、それでもどうみても手は届きそうにない。
現実的に受かりそうな別の学校も視野に入れ、1月入試の大宮開成を含め、6校に願書を出して、入試本番を迎えた。初日の大宮開成では無事合格、息子からは頼もしい言葉が返ってきた。
「俺、本気で第1志望に合格しようと思ってるから、ここでつまずくわけないじゃん」
「そうだね」と頷きつつも、夫妻は“難しいだろうな”と心の中で思い、息子の背中を見守るしかなかったという。
ハチマキに書かれた強い気持ちに涙
いよいよ第1志望校の受験当日がやってきた。会場から出てきた翔馬くんの顔は、それほど明るいものではなかった。
「できたと思うけれど、今までの学校ほど、“できた”という自信がない……」
弱気な言葉を漏らすのは初めてだった。もともと“憧れ校”、落ちても無理はない。落ちたときにどう声をかけようか、本人には悟られぬように、両親はそんなことを考えていた。そして、迎えた合格発表。そこにはなんと、翔馬くんの番号が書かれていた。
「受かった!」
まだまだ小さいと思っていた息子の背中が大きく見えた瞬間だった。
受験後、翔馬くんの部屋から出てきたのは、冬期講習中、毎日頭に巻いていたハチマキだった。「〇〇絶対合格するぞ!」と書かれた、翔馬くんの力強い文字を見た両親、頬に涙がつたった。
「こんなに強く思っていたなんて、ぜんぜん知りませんでした」
振り返って話す父親の慎吾さんは、目を涙でにじませた。自分の可能性を信じて勉強を続けた翔馬くんと、無謀と思える挑戦にも、出すぎることなく後ろから支えた両親。第1志望校の合格は間違いなく、3人で勝ちとった合格だろう。
「こうやって親を乗り越えていくんですね」
努力が無駄にならないという経験はおそらく、翔馬くんにとって、一生の宝となることだろう。
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