繰り返し語られる、別世界の王室ファミリーの話ではありますが、1人の女性の物語として、そして家族間の複雑な心情を描く物語として楽しめる秀逸な脚本であることも人気の理由にあります。言うなれば、日本の長寿ホームドラマ『渡る世間は鬼ばかり(渡鬼)』を見るのと同じ感覚で物語の世界に入れます。
緊迫した事件は特段起こりませんが、妹のトラブルの次は息子のトラブルと、一難去ってまた一難とエンドレスに続く話がどうも気になってしまい、引き込まれていくのです。『渡鬼』のそれは橋田壽賀子マジックによるものですが、こちら『ザ・クラウン』の脚本を手がけたのはピーター・モーガンです。
日本でも大ヒットした、ロックバンド・クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーに焦点を当てた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の原案を手がけたイギリスの脚本家で、前出の映画『クィーン』の脚本家でもあります。リサーチ力と脚本構成力に定評があり、どのシーズンも失速するエピソードがなく、安定度が抜群です。
そんななか、最新シーズンが最も視聴された理由はなんといっても登場人物の華やかさに尽きます。舞台は1970年代の終わり。エリザベス2世(オリヴィア・コールマン)をはじめ王室一族が躍起になっているトピックは30歳で未婚のチャールズ皇太子(ジョシュ・オコナー)にふさわしい花嫁探し。そこで登場するのが、かの有名なレディ・ダイアナ・スペンサー(エマ・コリン)です。
さらに、国政においては初の女性首相が誕生。マーガレット・サッチャー(ジリアン・アンダーソン)とイギリス女王との火花散る対立が見事に描かれています。この悲劇のプリンセスと鉄の女王の素顔に迫るストーリーがシーズン4の見どころなのです。
あの上目遣いも髪型もそっくりすぎるダイアナ妃
ダイアナ元妃を演じたエマ・コリンはオーディションの中から選ばれた25歳の新人女優です。あどけなさが残る仕草から、危うさを映し出した表情まで「ダイアナ元妃本人にそっくりすぎる」と、この役をきっかけに世界中から注目が集まっています。
結婚式が行われた当時、小学生だった筆者もテレビ画面越しで見るダイアナ元妃のシンデレラストーリーにかぶりつきで、あの特徴的な上目遣いとアイドル風ショートカット、パフスリーブのウェディングドレス姿が忘れられません。そのとき見た記憶がよみがえるようにあの頃のダイアナ元妃が『ザ・クラウン』で完全再現されています。
エマ・コリンはNetflixの公式インタビューでNetflixで配信中のドキュメンタリー『ダイアナ』などを参考にしていたことを明かしています。
「『ダイアナ』を100回以上見たとまでは言えませんが、『ザ・クラウン』のリサーチチームはすばらしく、レディ・ダイアナに関する資料が詰まった分厚いバインダーも渡してくれました。情報がまとまったこの巨大な資料が役作りにとても役立ったのです」
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