Netflix1億人が見た「ザ・クラウン」人気の理由 上目遣いも髪型もそっくりすぎるダイアナ妃

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『ザ・クラウン』は実物そっくりのキャラクターたちから、視聴者それぞれが必ずお気に入りのシーンを見つけることができるドラマだと思います。シーズン4に限らず、例えば、シーズン1では女王になりたてのエリザベス2世(クレア・フォイ)とチャーチル首相(ジョン・リスゴー)のエピソードも必見です。

ロングシリーズ化は最初から決まっていた

総合的に評価の高いドラマであることは、Netflixの共同CEOで最高コンテンツ責任者のテッド・サランドスも認めています。企画段階から太鼓判を押していたのです。2020年10月のフランス・カンヌのテレビ見本市MIPCOMのオンラインキーノートに登壇したテッド・サランドスが『ザ・クラウン』についてこう言及していました。

「ピーター・モーガンとはじめに『ザ・クラウン』について話し合ったとき、すでに彼は6シーズンのすべてのストーリーボード(草稿)を語ることができました。だからこそ、彼が提案したとおりに展開していくことにスリルを感じるのです。ほとんどの場合、クリエーターがそこまで明確な創造的なビジョンを持っていないのが現実です」

これは作品のロングシリーズ化について「惰性でシーズンを重ねる必要はない」というNetflixの考えを表す発言にもなっています。『ザ・クラウン』はロングシリーズ化に価値があり、計画的に数回のシーズンにまたがって完結する作品であるということなのです。なお、シーズン5が最終章となる話が一時期浮上していましたが、シーズン6まで公開されることに落ち着いています。

イギリスのクリエーターと名女優、俳優たちが『ザ・クラウン』をNetflixを代表するヒット作に導き、Netflixはこの『ザ・クラウン』を含めたイギリス発オリジナル作品にこれまで10億ドル(約1000億円)の製作費を投資しています。

延べ2万人を超えるキャスト、スタッフ、エキストラがNetflixイギリス発作品に参加していることもわかりました。2021年以降、さらに金額を上げた製作費を投じて、イギリス発作品製作が計画されています。

そのためか、イギリスでは2月からNetflixの基本月額料金が1ポンド値上げされるというオチ付きですが、今のところ『ザ・クラウン』があれば会員獲得と維持に苦労はないのかもしれません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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