日本の医療崩壊を示唆する「危険な数字」の正体 なぜ医療従事者はどこも「余裕がない」のか?
昨年末以降、新型コロナウイルスの新規感染者数が激増していることから、医療崩壊が現実的な視野に入り始めた。このペースで感染者が増えれば、「日本の感染者数は欧米と比べて少ない」というこれまでの常識も成立しなくなる。
現時点での患者数は欧米よりも少ない状況だが、それにもかかわらず、なぜ医療崩壊が懸念されるのだろうか。筆者は医療の専門家ではないので、医療現場のオペーレションではなく、医療従事者数など経済的・社会的観点から日本の医療崩壊について考察する。
コロナ危機が顕在化した昨年以降、日本のICU(集中治療室)の数が欧米各国と比べて少ないことは何度も指摘されてきた。だが、すべてのコロナ患者がICUでの治療を必要とするわけではないので、ICU不足は医療崩壊を起こす原因の1つではあるが決定的な要因とは言いがたい。
OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本における人口1000人当たりの医師数は約2.5人と調査対象30カ国中26位と低い。ただし、日本に近い国民皆保険制度を持つイギリスも2.8人とほぼ同じであり、アメリカも2.6人なので、とくに状況が悪いとは言えないだろう。
看護師数については、日本は人口1000人当たり11.8人で、31カ国中8位と上位だ。このデータだけを見ると日本が医療崩壊するとは到底思えないが、病床数を見るとまるで状況が違ってくる。
断トツの病床数が意味するもの
日本における人口1000人当たりの病床数は約13.0と、加盟国では断トツである。OECD各国の平均値は4.5なので、日本には3倍近い病床が存在していることになる。