日本が「AI人材確保」だけでは世界に勝てない訳 デジタル化を進めるうえで何が大事になるのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その方向性の中で、より具体的には、日本企業では2つのデジタル関連産業進化戦略を描けます。

第1の進化戦略は、アナログ感覚ベースのデジタル技術(アナログ感覚をデジタル化した技術)を中核部分に含む、システムや機器の分野を深掘りする、という進化戦略です。

アナログ感覚ベースのデジタルシステムとは、人間的な感覚をデジタルに置き換える工夫をした技術のことです。

人間のアナログ的判断をAI化する

例えば、人間のアナログ的判断をAI化する、というのがその典型例です。職人のアナログ的熟練を、自動化レーザー光機械のAIに学ばせることができれば、職人の代わりに切削できるようになります。

アナログ的熟練をベースに、デジタル切削加工技術を作り出すのです。これを中核にして、全自動で24時間稼働可能な「デジタルシステム」ができあがります。

第2の戦略は、最後の作業は現場のヒトが行うことを前提に、その主導権がヒトに渡る直前までの「ラストワンフィート」までデジタル化するシステムや機器に注力することです。「ラストワンフィート」とは、インターネットが普及し始めたころの「ラストワンマイル」(通信接続の最終工程)をもじった私の造語です。

典型例と私が考えるものは、協働ロボットと人間の働きがミックスされた生産システムです。最終工程の直前まではロボットがデジタル技術で効率的に作業を進め、その「ラストワンフィート」から先の仕上げはヒトが行います。

製造業ではモノづくりのさまざまな工程で、サービス産業ではほとんどつねに、最後の作業はヒトによって行われます。サービス産業の接客がいい例だし、モノづくりでも完全自動化でない半自動化生産システムはあちこちにあります。

最終工程の直前まではデジタルシステムがサポートし、最後の作業は「一配慮・一手間」にたけた人間が担当する。そうしたヒトとデジタルを融合した全体のシステムで、顧客への価値提供と作業効率の向上をめざす。その最後の一手間とITシステムの間の距離が、ラストワンフィートなのです。

次ページ地道に積み重ねていくと、大きなインパクトがある
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事