日本が「AI人材確保」だけでは世界に勝てない訳 デジタル化を進めるうえで何が大事になるのか
プラットフォームについては、インフラ利用料をとられることもあるでしょうが、そのコストが過大にならないように予防線を作る戦略を考えるにしても、インフラ利用料そのものはあきらめましょう。
しかも、電力供給という社会インフラの場合と同じように、プラットフォームインフラもその料金や独占性が規制されていくという歴史的運命にあるように思われます。すでに欧米で、個人情報保護や独占禁止を出発点にプラットフォーム企業の規制の議論が始まっています。いずれ儲からなくなるのです。
では、現場の強みを生かしたデジタル化とはどのようなものでしょうか。それは、人間くさいデジタルシステムや機器を目指す、深掘りする、という方向性です。「人間くさい」という形容詞をつけたのは、人間のアナログ感覚や現場のきめ細かい熟練が生きるようなデジタルシステムや機器をイメージしたからです。
感染対策でも発揮された「一配慮・一手間」の現場力
デジタルシステムというと、コンピューター、無機質、データ、人間不在のイメージを持ちやすいのですが、日本企業の得意技を活かせる分野を探そうとすると、デジタルの基本技術でなく、応用技術と応用ノウハウをメインの武器とする、という方向性が浮かび上がります。
しかも、アナログ感覚にすぐれ、きめ細かな動きを得意とする日本の現場を活かそうとすると、人間のにおいがするデジタルシステム・機器になります。
今回の新型コロナウイルス感染対策でも、日本国内のヒトの行動をみていて、「一配慮・一手間」の特徴があると考えました。「一配慮」を余分に他人に対してすることと、「一手間」の余分で細かな行動をとることをそれほど惜しまないということです。
公衆衛生を例にとれば、マスクをみんながするという「一配慮」、みんながしょっちゅうアルコール消毒をして、手を洗うという「一手間」です。
これは、日本の産業の現場が強みとしてきたベースと共通しています。例えば、工場の現場で用いられてきたスローガンである「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)や、サービス業の「おもてなし」といったものは想像しやすいでしょう。
コロナの感染拡大を「一配慮・一手間」で乗り切って、ポストコロナのデジタル化でも「一配慮・一手間」の強みを生かすということです。日本企業らしい展開です。
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