新線開通で沸く「綱島」かつては温泉も湧いた街 今は築160年超の古民家やApple研究施設が混在

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思えば東横線ではこの20年ほどの間、沿線の状況が激変してきた。2000年には、日吉に東急目黒線が乗り入れ、東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線とも相互直通運転を開始。2004年にはみなとみらい線が開通し、それまでの東横線の終点・桜木町駅は横浜駅となり、渋谷駅から東横線に乗ると、多くの列車の終点は乗り入れしているみなとみらい線の元町・中華街駅となった。

綱島駅前(写真:筆者撮影)

2013年には東横線渋谷駅が地下化され、東横線・みなとみらい線が東京メトロ副都心線、さらに西武池袋線や東武東上線と直通運転するように。

東横線各駅の列車の行き先表示に、小手指、森林公園などの埼玉各地の駅名が表示されるようになった。

さらにこの先、相鉄新横浜線からの列車が乗り入れると、下り方面の現在の終点駅、元町・中華街、菊名、横浜に相鉄の駅が加わり、ますます複雑になりそうだ。

やはり2年後に竣工予定の29階建ての新綱島駅の駅ビルには252戸の住戸が入り、駅前のタワーマンションとなる計画。隣りあう低層棟には商業施設や港北区の区民文化センターなどができる。新横浜線の開通に伴い、大型マンションなどの計画も増えていくことだろう。

時価総額「世界1位」企業の拠点も

もう一つ、綱島でぜひとも見ておきたいものがあった。2011年に閉鎖したパナソニック(松下通信工業)工場跡地にアップル・コンピュータの研究施設「アップルYTC(横浜テクノロジーセンター)」ができているというのだ。

パナソニック工場跡地にできたアップルの研究施設(写真:筆者撮影)

駅前から綱島街道を日吉方向に10分ほど歩いて行くと、しまむら 、デニーズなどのロードサイド店舗が並ぶ一画が現れ、アップルの施設らしきシャープな外観の建物が見える。

エントランス内にはアップル社のりんごマークが認められるが、外部には施設名を明示するものはなく、建物の周辺では、ここに勤務していると思われるアジア系の女性二人連れや西洋人女性の姿を見かけた。

このパナソニック工場跡地にあるのはアップルの施設だけではない。敷地全体が綱島SST(サスティナブル・スマートタウン)と名づけられた、パナソニックが展開する次世代都市拠点なのだ。慶應義塾大学の国際学生寮、高級マンション「プラウド綱島SST」、ショッピングセンター「アピタテラス」などのある一つの「街」として計画され、2018年に“まちびらき”している。

すでにじわじわと変化している綱島の街。2022年下期には新綱島駅と駅ビルが開業し、さらなる起爆剤となることが予想される。その後2030年頃には、綱島は東横線沿線で武蔵小杉と並ぶような大変貌を遂げているのかもしれない。

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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