辞めた人をけなす上司が若手から嫌われる理由 日本企業の「ポテンシャル採用」にも問題はある
会社を辞めることは「ふつう」のことになった
現代日本ではすでに会社を辞めて転職することはよくあるふつうのことになっています。かく言う私も5社に在籍した経験があり転職経験豊富と言ってもいいかもしれません。
例えば、総務省の「労働力調査」などを見ると、大卒新卒採用者の3年以内の離職率は約30%と数十年変わっていません。また、1年間の転職率(転職者数÷総労働者数)はここ10年ほど5%前後でこれもあまり変化はありません。
単純計算すると、10年間で考えれば転職する人は50%ですから、2人に1人は転職をしている状況です(もちろん同じ人が何回もしていることもありますが)。半分の人が行うことは、もはやふつうのことでしょう。
過去、終身雇用で年功序列が当たり前だった時代の日本では、新卒で入社した会社を途中で辞める人は「落ちこぼれ」か「裏切り者」のような扱いを受けていたこともありました。しかし、今は上述のように転職が当たり前の時代です。
そうなると、未だ「昭和的」な雰囲気の企業ならともかく、会社を辞めるということに対する意識も変わってきているように思いますが、どうもそうではないようです。
以前、某メガベンチャー経営者が自社を辞めた社員を非難するような記事を書いて議論が起こったことがありましたし、人事担当者向けのセミナーでは「定着化」「離職をいかに抑えるか」をテーマとしたものが目白押しです。
基本的に、会社側からみると、辞めることは今でも決していいこととは思われていません。
私も経営者のはしくれなので気持ちは痛いほどわかります。というのも、今でも多くの日本の会社は、ポテンシャル(潜在能力)採用、つまりすでにスキルのある人を採るのではなく、将来の成長を期待して採用しているからです。
そうなると、入社後しばらくは育成期間で教育コストがかかる一方で、報酬に見合った成果はなかなか出してくれません。そして、ようやく会社に貢献してくれるようになったときに辞められたのでは、たまったものではありません。
そういう背景を考えると、力をつけてきたら、さっさと会社を去る人に対して愚痴のひとつも言いたくなることでしょう。