下請けで苦しむ中小企業は「5%未満」の現実 公的データが示す「イメージと実態」の大乖離

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建設業と製造業は、合わせても全体の22.7%しか占めていません。これらに情報通信業を含めても全体の23.9%にしかなりませんので、全体の生産性に与える影響は相対的に小さいと考えるのが妥当です。ちなみに、情報通信の生産性は999万円で、情報通信の中小企業の生産性も636万円と、中小企業としてはかなり高い水準です。

「下請け比率が5%」というのは、実感として少なく感じる人も多いかもしれません。私もこの数字を見て、衝撃を受けました。

この調査には一部の業種、とりわけ建設業が含まれていないことも気にはなります。しかし「中小企業の味方」を使命とする中小企業庁には、下請け比率を少なく見積もるインセンティブは存在しないと考えるのが妥当です。ですから、この程度の企業しか大手の下請け業務をやっていないという現実は、そのまま受け止めるしかないのです。

生産性の低い業種ほど、下請け比率も低い

一方、業種として生産性が最も低い宿泊・飲食業の下請け比率は0.1%です。生活関連も0.8%で、小売業は1.0%でした。

宿泊・飲食業は中小企業全体の14.2%を占めており、生産性は184万円です。生活関連は10.1%を占めており、生産性は282万円。小売業は17.4%で、生産性は321万円でした。この3つの業界で、中小企業全体の41.8%を占めています。

つまり、下請けの比率が高い業種の生産性は決して低くなく、逆に生産性の低い業種は下請け業務を行っている比率が非常に低いというのが現実なのです。

したがって、仮に大企業の搾取が中小企業の生産性の低さの一因だったとしても、せいぜい5%程度の説明要因にしかならないのです。当然ながら、搾取に対しては対策を打つべきだと思いますが、それが成功したとしても、全体の生産性を大きく向上させる効果は期待できません。

搾取されている業種に従事している人が身近にいるからといって、一部の特殊な業界の例を一般化してはいけません。エピソードや感覚をエビデンスにして何かを主張するには、別途データを用いた検証が求められます。

一般的に、中小企業の中身と実態はほぼ知られておらず、多くの「神話」がはびこっているように見受けられます。実際には少数派なのに、「ものづくり」の中小企業こそ中小企業の代表だと言わんばかりの主張は、先ほど挙げた『朝日新聞』の記事のほかにも、枚挙に暇がありません。

逆に日本企業全体の話になると、そのイメージはごくごく一部しか占めない「上場企業」の姿が想像されていると感じます。ほとんどの日本企業は中小企業であり、同族企業なのに、「株主資本主義が日本経済をダメにした」「日本型資本主義を作らないといけない」などという、大企業にしか当てはまらない理屈になりやすいのはその象徴的な例です。

中小企業について語るときは、イメージをいったん忘れて、実態を表すデータを探してみることをおすすめします。

次回は、「デフレだから生産性を上げられない」という主張を学問的に検証します。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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