終始、和やかな雰囲気だったトヨタ株主総会 やはり好業績こそ、最高のクスリなのか

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前年よりは減ったが、4000人以上が出席した。写真は愛知県豊田市のトヨタ本社

6年振りの最高益に不満を漏らす株主などほとんどいなかった――。

トヨタ自動車は6月17日、愛知県豊田市の本社で株主総会を開いた。出席株主は4163名。取締役選任など計6議案を可決した。

2014年3月期の連結営業利益2兆2921億円と、6年ぶりに最高益を更新したトヨタ。冒頭に豊田章男社長は「社長に就任して5年間、経営体質は着実に強くなった」と胸を張った。そのうえで、「世界販売が1000万台になった今こそ、実は危機的状況」と慢心を戒め、「将来のために今、畑を耕し、種まきをする」と語った。

 株主からは様々な質問が飛び交った。たとえば自動運転の開発については、加藤光久副社長が「トヨタにとって車はドライバーが意のままに運転を楽しむもの。人がまったく関与しない自動運転や無人運転を商品化するつもりはない。自動運転技術をしているのは、安全性の向上とドライバーの負担を軽減するため」と返答。トヨタが出遅れているとされるディーゼルエンジンや過給機付きエンジンの開発には、須藤誠一副社長が「着々と開発を進めているので、ご安心いただきたい」と応じた。

「最高益のお礼が言いたい」

総じて株主からの声は、会社側に好意的な内容がほとんどだ。OBの株主からは、現場の従業員に対して「もっと愛が欲しい」といった要望。トヨタの創業期をモデルにしたドラマ「リーダーズ」や、豊田社長が出演した経済番組について、「感動した」と感想を述べる株主までいた。「史上最高益のお礼とご苦労様を言いたい」「グローバル企業で、日本を代表する企業として、トヨタの役員賞与は極端に低いのではないか」とまで、持ち上げる株主の発言もあった。反対らしい声と言えば、社外監査役に対する反対意見くらいである。

 翌18日に開示された議決権の行使状況を見ると、会社側の議案への賛成率は、ほとんどが90%台後半と高い。とりわけ取締役選任では、豊田社長への賛成率が社内取締役では最高の97.43%となるなど、株主からの高い支持をうかがわせる。

5月の決算発表時にトヨタが公表した15年3月期の見通しはほぼ横ばいだ。今期を「意図ある踊り場」と位置付け、将来への種まきを優先する方針を明確にしている。株式市場はより高い成長を求めるのが常だが、現在のトヨタ株主の多くは、中長期を重視する会社の考えに賛同しているのかもしれない。「結果」を残しているだけに、終始、和やかな雰囲気で幕を閉じたトヨタの総会だった。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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