バッハを聞くと「勉強&読書」がはかどる理由 全米トップ脳トレーナーが教える科学的勉強法
この記事を読んだら、ためしに、いすに座った状態で、机にもたれかかったり、うつむいたり、浅く呼吸したり、顔をしかめたりしてみよう。その姿勢でどのくらい「よし、やろう」という気になれただろうか。どのくらい能率が上がりそうだろうか。
これらは、勉強中の学生がやりがちな姿勢だ。これでは勉強が嫌いになるし、頑張っても結果が出ないのは当然だ。次に、背筋をしゃんとして笑顔を浮かべてみよう。どのくらい気分がよくなっただろうか。
五感を刺激して記憶力や集中力を高める
こんな経験をしたことがあるだろう。部屋に入ると、いいにおいが漂っているのに気づく。オーブンで焼けるスパイスのにおいかもしれない。そのにおいを嗅いだ途端、幼なじみのAちゃんと遊んだ日の記憶がよみがえる。あなたの鼻から牛乳が出てきたのがおかしくて、Aちゃんに大笑いされたのだ。スパイスのにおいから、なぜそんなことが思い出されたのか?
理由は、Aちゃんと遊んでいたときにそのスパイスのにおいがしていたから。においは、記憶を脳の最前部に持ってくる働きにとても優れているのだ。ローズマリーの香りは記憶力を改善するとわかっている。ペパーミントとレモンは集中力を高める。
「答えは脳の構造にあるようだ」と、ペンシルバニア州立大学医科大学院の博士課程修了研究者、ジョーダン・ゲインズ・ルイスは書いている。
「外から入ってきたにおいはまず、嗅球という、鼻の奥から脳の底部にかけて延びる組織で処理される。嗅球はへんとう体と海馬と直接つながっている。どちらも感情や記憶と関わりが深い脳の領域だ。興味深いことに、視覚、聴覚、触覚の情報はこの領域を通らない。だから嗅球は、ほかの感覚よりも感情や記憶を強く刺激するのだと思われる」
ここからわかるのは、においはとても重要だが、まだ十分活用されていない記憶のツールだということだ。あるにおいが子ども時代に一気に引き戻してくれるなら、別のにおいを使って思い出す力を加速することも可能なはずだ。大事な試験を控えていれば、精油を手首に少量つけて勉強し、試験前に同じ精油をつけるといい。重要な会議の前にしても同様の効果が得られる。
ただしまわりの迷惑にならないよう、めったやたらにつけないこと。思い出す力を高めるにはほんの1、2滴でいい。
初めて何かを覚えたころのことを思い出してほしい。たいていの子と同じように、アルファベットを歌で暗記しなかっただろうか。テレビ番組『スクールハウス・ロック』の歌を聴いて、アメリカの議会で法案が成立する仕組みを知ったかもしれない。この世に音楽が生まれてからこのかた、親たちは音楽の力を借りて、わが子に人生の基本を教えてきた。それが有効だったからだが、音楽が学習に役立つことにはちゃんとした科学的根拠がある。
たくさんの研究が音楽と学習を関連づけている。カナダの心理学者、E・グレン・シュレンバーグ博士が発表した「覚醒度・気分仮説」は、音楽と気分の相関、また気分と学習の相関を明らかにし、音楽を聴くことで学習能力を高められるとしている。
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