1日5万人感染「イギリス」はどうなっているのか ワクチン接種は始まったが、閉塞感が依然強い

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道を歩いているときに、前を歩いていた女性が突然立ち止まり、こちらを振り返って「尾行しないで!」と強く言われたこともある。「尾行しているわけじゃないですよ」と答えると、「みんなが私を尾行しているのよ」と言われてしまった。一方、近所の家から見知らぬ顔をした人が出てくると、「室内で他人に会うのは禁止なのに」と筆者自身が思ってしまう。互いを監視する気持ちが自然に湧いてしまうこの頃だ。

これまでは「公のために働いている人」として感謝されてきた駅員やバスの運転手、スーパーマーケットで働く人に対し、マスクをつけずに近寄ったり、唾を吐いたり、あるいは悪態をつく人も増えているという。

「マスクをつけていない人」を注意すると

筆者の隣人でシングルマザーのスザンナさんは、大手スーパー、セインズベリーズで働く。「私が働かないと、生活できない」。スーパーの従業員はキーワーカーとなるため、スザンナさんは毎朝、一人息子を小学校に連れていった後で職場に向かう。

スザンナさんが働くセインズベリーズの店舗内では、従業員も買い物客もマスクを着用しているが、たまにつけていない客の姿を見ることがあった。マスク(あるいはそれに類したもの)をつけずにバスに乗ったり、小売店舗に入るのは違法だが、呼吸器系の病気を持つ人はその義務がないなど例外もある。

「あまり注意しないようにしている」とスザンナさん。「怒る人が多いから」。

ロンドン市内のバス停に置かれている、室内の空気を換えることを勧める電子サイネージ(撮影筆者)

通常、入り口には従業員が1人立ち、マスクをつけずに入ろうとする人には「つけてください。規則ですよ」と声をかけているが、つけようとしない客と押し問答になっている場面を何度か見たことがあった。「うるさい!」と捨て台詞を残して出ていく客もいた。

今回のロックダウンが開始されてから、「規則を厳格に守ってほしい」と政府閣僚は繰り返している。

筆者が先日、セインズベリーズに行ってみると、入り口に立つ従業員は2人に増えていた。今後は、着用をさらに徹底させるつもりのようだ。

感染者の増大は病院が刻々と手いっぱいになることを意味する。例年、冬場は救急患者が増え、病床が不足気味となるが、今年はそれに輪をかけて新型コロナの患者を受け入れることになった。

イギリスの国営「国民医療サービス(NHS)」の病院で治療を受けている新柄コロナ患者の数は現在、約3万6000人。このうちの約1万人強が昨年のクリスマス以降に入院した人である。

NHSイングランドの調査によると、通常であれば手術をするはずの人が後回しとなっており、その数は446万人に上っている。救急病棟に運ばれた人の4人に1人(約9万人)が病床を見つけるまでに4時間以上待機し、約4000人近くは12時間以上待たざるをえなかったという。

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