1日5万人感染「イギリス」はどうなっているのか ワクチン接種は始まったが、閉塞感が依然強い

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NHSの危機を救うため、保健省は1月13日、新型コロナ患者の一部を高齢者用ケア施設に移動させる方針を発表した。

ロンドンでは一部の患者はすでにホテルに移動しているが、ケア施設側は受け入れには慎重な姿勢を見せる。昨年春、NHSの負担を軽減するため、PCR検査を受けないままに患者がケア施設に移動させられた。人権団体アムネスティー・インターナショナルは、これがケア施設での大量感染や死につながったとする報告書を出している。

すでに約300万人がワクチンを接種

こうした中、一筋の光となっているのがワクチン接種だ。

「もうすぐやってくるぞ! 24時間体制で進むコロナのワクチン」という見出しを付けた、大衆紙『デイリー・エクスプレス』の1面(1月14日付、BBCのニュースサイトより)

昨年12月8日からはアメリカ・製薬大手ファイザーとドイツ・ビオンテックが開発したワクチン、1月5日からはイギリス・アストラゼネカとオックスフォード大学開発のワクチンの接種が進んでいる。接種は13日時点で、約300万人。

ケア施設にいる高齢者とそのケアをする職員、医療分野・ソーシャルケア分野の前線で働く人、80歳以上を中心に接種が進んでおり、来月中旬までに70歳以上の希望者全員(約1400万人)への接種終了を目指す。NHSがその運営を担い、市民はGP(一般医)を通じて予約を入れ、医療クリニックや地域のワクチンセンターなどで接種を受ける。約8万人のボランティアが手伝う。

3番手となるアメリカ・モデルナ社開発のワクチンもイギリス・医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の承認を受けているが、イギリスでの使用は春以降になる見込みだ。

イギリス政府はアストラゼネカ製を1億回分(5000万人分)、ファイザー製を4000万回分(2000万人)、モデルナ製を1700万回分(850万人)注文しており、これだけでもイギリスの総人口(約6700万人)をカバーできる。このほかにも4種類のワクチンが治験中だ。

3種のどのワクチンも、1回目の接種後、一定の間隔を置いて2回目を接種する。イギリスの政府は1人でも多くの人にワクチン接種を広げるため、製薬会社側が設定した1回目と2回目の接種の間隔をより長くし、最長3カ月とする方針を採用している。

医薬当局や医療専門家の組織「予防接種・免疫合同委員会(JCVI)」が間隔の長期化を承認したが、ファイザーはほかの間隔でのデータがないと指摘し、医薬品業界では大きな議論が発生している。はたして、日本がワクチン接種を開始する頃には、この問題に片がついているのかどうか。

バスに乗るときや店舗での買い物にはマスクをつける、外から帰ったら手を洗う、たとえ戸外であっても、他者とは交流しない。不自由で息苦しさを感じるが、いつ自分があるいは自分の家族や隣人がコロナに感染するかわからないので、「感染しない・させない」をモットーに予防策を取る毎日だ。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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