手数料で稼がない、異端のチケットサービス

街の「提灯2.0」広告を志向するPeatix

チケットが売れるプラットフォームを志向

Peatixではイベントを作成して管理できるが、集客にまだまだ課題があるといえるだろう。イベントを見つけるという観点では、現状でもアプリやメールマガジンでお勧めイベントが表示される。一方でイベント主催者がチケットを売るための工夫された機能が2つある。

「ひとつ目はウォッチリスト機能です。イベントをウォッチするという機能があり、そのイベントのチケットの残りが少なくなったり、今買わないと完売するというメールを送ることができます。前者はCVRが7%、後者は約15%にも上ります。2つ目はイベントページをソーシャルメディアでシェアすると10%割引になる機能。開催直前でチケットが売り切れてない際に有効です。『あと一押し』することで、チケット販売の増加に貢献している機能です」

主催者側がイベントに興味のあるユーザーに能動的に働きかけられる点は大きい。現に、かなり高いCVRとなっている。イベントを見つける機能としては、今後はPeatix内で検索機能やディレクトリ機能が実装されるという。

この手のロングテールを狙うサービスは、スケールするのに一般的にはかなり時間がかかる。米国のチケットサービスEventbriteは創業から8年でチケット販売総額1000億円を突破した。PeatixのスケールスピードはEventbriteよりも早いようだ。小規模イベント主催者のマネタイズも可能な社会的意義が高い事業であり、生活に密着するサービスとなることを長い目でみて期待したい。

【梅木雄平のスタートアップチェック (各項目を1~5で採点)】
●経営陣:3.8 500 startupsを初期の投資家として迎え入れることにも成功しており、すでに海外展開でもある程度の実績があることから、日本発にもかかわらず世界で戦える数少ないスタートアップ企業に成長させる力があると感じる。
●市場性:3.6 イベント市場の中でもロングテール市場に特化。イベント平均参加人数は30人ほど。少人数イベントの広告市場という新規市場の創造が期待できるが、数千億円になるほどの巨大市場にはならないと推測。
●利益率:3.5 手数料ベースではチケット販売総額がそうとう伸びないと収益インパクトは薄い。広告モデルのPeatixイベントアドが収益を押し上げるカギとなるが、ゼロからイチの市場を創る領域であることもあり、アップサイドは未知数。営業マンをほとんど置かないセルフサービスのプロダクトであるがゆえに、スケールしていくと利益率が上がっていく。 
●競合優位性:4.3 イベントのロングテール市場を低手数料率で狙い、Peatixイベントアドというキラーコンテンツでリピート率を高める。ロングテール市場においてはそうとうの競争優位性を築けており、後発でこの市場を他のプレーヤーが崩しにかかるのは困難だと考える。 
●海外展開力:3.7 すでにシンガポールとニューヨークに拠点を開設。チケット販売数の約2割が海外であり、特にシンガポールは現地のネットワークに強い人材を採用し、うまく立ち上がっているもよう。決済方法などを徹底的にローカライズして利便性を高めていることも、海外展開の成功に寄与しているという。シンガポールのユースケースを持って横展開することが可能と見る。 
●総合点 :3.7 少人数イベントのチケット販売とメディア化による広告収益というモデルは、新しい市場であり社会的意義も高い。ただ、単独でものすごく儲かるモデルには見えない。 
●予想EXIT:2017年ごろの売却
●推定時価総額:100億~150億円
 推定根拠:単独で上場するよりも、GoogleやFacebookのような巨大プラットフォームに売却したほうが、「イベントの体験を豊かにする」というコンセプトをいち早く実現できると考える。Peatixイベントアドの収益のスケーラビリティがある程度見えた段階で売却するのが望ましい。GoogleやFacebookのようなプラットフォームに乗ることで真価を発揮するプロダクトといえるだろう。
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