バルミューダ、一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法、目指すは売上高24兆円?
1つは、自社工場を持たず、中国や台湾、国内の工場に製造委託することで、自社では企画開発と販売に注力する「水平分業体制」を敷いていることだ。ゆえに、営業利益率は10%と高い(パナソニックは3%、日立は5%。いずれも今期の見込み)。ただ、同様の戦略はソニーのゲーム機や一部の家電、任天堂、海外ではアメリカ・アップルなどがつとに採用している。
むしろバルミューダならではの強みといえるのが、すでに市場が成熟しきった汎用品の市場で、相場にとらわれない高単価で製品を販売していることだ。
同社が展開する扇風機やトースター、炊飯器などは、通常であれば製品の老朽化や故障などにより、「必要だから買い替える」際にしか需要は発生しない。さらに、春と冬の2度、商品の入れ替えを行い、新型が発売されるため「型落ち品」はセール対象となって価格競争が巻き起こる。
社長がだいたいの販売価格を決定
一方、バルミューダの商品の値付けは独特だ。寺尾社長が、この商品であればいくらまで出す、という「消費者感覚」(寺尾社長)に基づいて、開発の初期段階でだいたいの販売価格を決めてしまう。他社製品については「全然見ていない」(同、以下のカギカッコ内も同じ)。
さらに、1つの商品に対して展開するのは「バルミューダ ザ・〇〇」という1つの型だけで、廉価版など価格のバラエティーはない。一度発売したら、5年、10年と1つの型を発売し続け、定価販売が基本だ。
では、消費者はバルミューダのどのような点に価値を見出し、相場より高い家電を買っていくのだろうか。2020年12月下旬に行ったインタビューで、寺尾社長はこう解説する。
「バルミューダは、クリエイティビティーによってお客様に選ばれている会社です。クリエイティブとは、簡単にいえば『創意工夫』のこと。昨日までなかった方法を生み出すことです。当社は、創意工夫をして1つの商品を開発し、そこにいくつも工夫を重ねていく。たとえば、従来のトースターとバルミューダのトースターにはいくつも違いがある」
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