社外へのエンゲージメントに成功したユニリーバ
次に、ストーリーテリングのもう1つの効果である「エンゲージメント」に成功した例を挙げてみよう。「メガリスク」など人類が直面している環境問題や社会問題に対応するためのストーリーに、ステークホルダーを巻き込んでいくものだ。
好事例が、ユニリーバが2010年に発表した「サステナブル・リビングプラン」だ。環境への負荷を減らし、社会貢献を実施し、CSRを推進しながら、自らの成長戦略としてビジネスの規模拡大を目指すものである。2020年をターゲットに、「健康・衛生」「環境負荷の削減」「経済発展」の3つの分野で9つの大きな目標を設定。製品のライフサイクル全体を目標に含み、自社だけでなく、サプライヤーや物流業者、さらに消費者の環境負荷にも責任を負うものだ。
② 食:ユニリーバの全製品に関してひきつづき味と栄養面での品質改善を進める。
③ 温室効果ガス:2020年までに、製品のライフサイクル全体から生じる温室効果ガスを半減させる。
④ 水資源:2020年までに、消費者がユニリーバの製品を使う際の水使用量を半減させる。
⑤ 廃棄物:2020年までに、製品の廃棄に関連して生じる廃棄物を半減させる。
⑥ 持続可能な調達:2020年までに、原材料となる農産物すべてで持続可能な調達を実現する。
⑦ 人権・労働者の権利:2020年までに、自社だけでなく、サプライチェーン全体で人権・労働者の権利が尊重されるようにする。
⑧ 女性のための機会:2020年までに、500万人の女性のエンパワーメントを実現する。
⑨ 包括的なビジネス:2020年までに、550万人の生活の向上をサポートする。
このストーリーは、発展途上国などを含めた地域で、人類が抱える大きな課題の解決を協働して行うというものだ。自社の取り組みとして、また、自社だけでは難しい活動を、消費者やコミュニティといったステークホルダーの共感を呼ぶことで、一緒に解決に取り組むよう促している。
プランは、CEOのポール・ポールマン氏が強力なトップダウンにより実行した。それぞれ大きな社会課題を、ユニリーバと地域のコミュニティや従業員、また、関係者という重要なステークホルダーを巻き込んで解決していく、持続可能性に関するストーリーが語られている。
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