「渋沢栄一」が20代で発揮した人の心をつかむ技 上司・慶喜を口説き、農民と親しんで人材募る

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すると続々と志願者が集まりはじめ、200以上に到達。播州、摂州、泉州でも応募者が相つぎ、全体で456、7人となった。栄一には白銀5枚と時服一領が褒美として与えられた。

この行動は、栄一が人間関係を理解した上で人材を集め、組織化する能力があることを示したケースであった。

人間関係をよく理解し、組織化に成功

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現代風にいえば、リーダーシップをよく発揮してみせたのである。

「それのみではなく、此行の道すがら、栄一は人情風俗の視察に力つとめて、芸能ある者、農商の道に功のあつた者、孝子・節婦・義僕等を調査し、之を具申して褒賞を請ひ、遂に允されて栄典の沙汰が行はれたといふ」(幸田露伴『渋沢栄一伝』)

親孝行な者や忠義な者を評価するのは、儒学の教えである。

26歳になった栄一は、かねて学んだ儒学の精神を行動によって表現できる、ふところの深さを身につけるようになっていたのであった。

中村 彰彦 作家

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なかむら あきひこ / Akihiko Nakamura

1949年栃木県生まれ。東北大学文学部卒。在学中に『風船ガムの海』で第34回文學界新人賞佳作入選。卒業後1973年~1991年文藝春秋に編集者として勤務。1987年『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞を受賞。1991年より執筆活動に専念する。1993年、『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀文学賞を、1994年、『二つの山河』で第111回(1994年上半期)直木賞を、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を、また2015年には第4回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞する。幕末維新期の群像を描いた作品が多い。

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