コロナ禍予算、歳出増回避した「2つのからくり」 当初予算案は過去最大でも実質増はわずかに

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第3次補正予算案の審議が終われば、通常国会の焦点は2021年度当初予算案の審議に移る。

当初予算案は、一般会計で歳出総額が106.6兆円と過去最大となる一方、税収はコロナ禍によって落ち込むことを見越して57.4兆円とした。その結果、新規発行の国債でまかなう収入は43.6兆円となり、歳出総額に占める国債依存度は40.9%になった。

公債依存度が当初予算案で40%を超えるのは、2014年度以来である。2020年度の第3次補正後の公債依存度が前代未聞の64.1%だったことに比べれば低水準だが、第2次安倍晋三内閣以降、着実に低下させてきた公債依存度が振り出しに戻った形だ。

小学校「35人学級」がついに実現

2021年度当初予算案でもコロナ対応は優先課題になる。国立感染症研究所の定員をほぼ倍増するなど感染症危機管理や保健所の体制強化、PCR検査や抗原検査などを充実する予算を増やし、感染症対策のための診療報酬を臨時的に増額する。加えて、コロナ対策の予備費を当初予算案に5兆円計上した。

他の歳出増要求も続々と認められた。2021年度が改定年である介護報酬はプラス0.70%となり、前回の改定率(プラス0.54%)より高かった。コロナ禍によって産業全体で給与収入が減る中、介護保険料の負担が増えると可処分所得を減らすことになるが、こうした決着となった。

文教予算では、2021年度から5年間かけて公立小学校の全学年で35人以下学級を実現することが決まった。少人数学級を実現するには、それだけ教員数を増やさなければならず、教員人件費がより多く必要となる。35人学級は現在小学1年生のみとなっている。これは民主党政権が決めたことだが、その後小学2年生以上には採用しないままだった。

安倍政権期にも毎年のように要望はあったが、認められなかった。それが2021年度予算案では、少人数学級の教育効果のエビデンスが判然としないまま、35人学級を採用した。

公共事業関係費や防衛関係費も増額された。防衛関係費は宇宙・サイバー・電磁波といった新領域の能力強化など、領域横断作戦を可能とする態勢の構築を推進する予算も盛り込まれ、7年連続で過去最大を更新した。

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