コロナ禍の「自宅DIY」に立ちはだかる意外な壁 求められる「住宅履歴」の適切なメンテナンス
今回は何らかの手違いで③の対応がなかったため、TOTOの広報部からはお詫びの言葉があったが、実は筆者の方も重大なミスを犯していた。
新築引き渡し時に渡された竣工図面を調べてみると、設備機器・部品表に正式な品番「TLP31 AX#N1C」が明記されていたからだ。この品番でTOTO:COMETを検索すると、取替品「TLHG31AEFR」がヒットし、カタログ価格は3万4600円(税別)とわかった。
建材や設備機器の実勢価格は、カタログ価格とは大きな開きがあるのは建築業界の常識だ。ムサシノ機設からは35%引きの2万2490円で購入したが、品番さえ判ればネット通販でも簡単に調べられる。工業資材ネット通販最大手のMonotaRO(モノタロウ)では約2割引の2万8900円で売られていたが、Amazonでは何と約6割引の1万4400円だった(2020年10月15日調べ)。
竣工図面など「住宅履歴」管理の必要性
自動車には定期点検や車検制度があり、その履歴は整備手帳に残されていく。中古車の売買ではメンテナンス情報が反映されて査定が行われている。一方で、既存住宅では、木造戸建ての場合は約20年で価値がほぼゼロと査定されて売買されてきた。
こうした状況を打開しようと、国土交通省では2009年に長期優良住宅認定制度を創設し、性能用件のほか維持保全計画の策定を認定条件とした。さらに竣工図面、建築確認書類、点検・修繕などの住宅履歴情報を蓄積・活用する「いえかるて」制度の普及を図ってきた。自動車の定期点検と整備手帳に相当する仕組みを整えてきたわけだ。
過去10年間に認定された長期優良住宅は113万戸で、住宅ストック全体の2%に過ぎない。住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会が発行する「いえかるて」の共通IDは約12万件にとどまっている。
既存住宅の流通促進に向けて、2017年には安心R住宅制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)が導入され、点検・修繕の記録保管・開示が必須項目となっているが、安心R住宅の認定件数は2690件(2020年3月末)と低迷したままだ。
国交省では、2020年10月に既存住宅流通小委員会を立ち上げて、長期優良住宅と安心R住宅のテコ入れを検討しているが、制度ばかりを見直しても長年続いてきた商習慣を変えるのは簡単ではないだろう。
コロナ禍を契機に住宅への関心が高まるなか、所有者が住宅をきちんと管理・メンテナンスして、記録に残していく行動を定着させることが必要ではないだろうか。
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