牛乳パックの「なぜ」で伸ばせる子どもの創造力 「考える子」を育てるために大事な3ステップ

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富士山の高さは3776m、地球の半径は約6400kmなので、直角三角形ABOにおいてAO(6403.776km)とBO(6400km)の距離から、三平方の定理を使ってABの距離を求めることができる。

計算すると、ABの距離は約220kmである。富士山頂から東京都心までの距離は100kmくらいだが、千代田区富士見をはじめ板橋区や都郊外の立川市、八王子市、東村山市などに「富士見町」という町名があるわけがわかるだろう。

およそ子どもに物事を教える大人としては、三慧の中の「修慧」のステージで説明できることが望ましい。子ども自身にもこの3段階を上ってほしいのだが、それにはまず興味を持ってもらうこと、そして最終目標の修慧の段階のイメージをわかってもらうことが必要なのだ。

子どもを見下す態度で教えていないか

大人が子どもに教えるときは、とくに「説明の相手を思う心」が大切である。子どもを見下すように話すのはマイナスで、あくまでも対等な態度で教えることが重要だ。そうすることで子どもは、理解できない内容について正直に「やっぱりわからない」と遠慮なく言えるからである。

教える側は同時に、「難しいことをよりやさしく説明する」ことが大事だと悟るだろう。このような繰り返しによって、子どもは諸概念を根本から理解していくことになる。

筆者は教える側が対等に話すことの重要さを大学教員人生43年間でもたびたび感じてきた。数学は友人同士で勉強し合うと、全員の学力がアップするのである。

友人同士だと、理解の遅い者でも遠慮せずに質問できるので、ごく基本的なことから理解を深めることができる。一方、教える立場となる理解力のある友人は、聞慧から思慧、思慧から修慧と、ステージを高められる。

この数年間に教えた桜美林大学リベラルアーツ学群数学専攻の学生や、同志社大学理工学部数理システム学科の学生たちの中でも、そうした事例がいくつも目に浮かぶ。

子どもに算数・数学を教える親御さんは、子どもから何でも質問できる対等な立場をぜひ整えてほしい。「どうして?」と子どもがたびたび言う姿は素晴らしいのであり、それに対して「どうしてもこうしてもありません!」などと言うのは最悪である。

さらに、子ども自身が三慧のステージを上っていくためにも、子ども自身から親御さんに、理解したことを説明させてみると面白いだろう。

芳沢 光雄 数学・数学教育者

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よしざわ みつお / Mitsuo Yoshizawa

1953年東京都生まれ。東京理科大学理学部教授(理学研究科教授)、桜美林大学リベラルアーツ学群教授などを歴任し現在、桜美林大学名誉教授。理学博士。国家公務員採用I種試験専門委員(判断・数的推理分野)、日本数学会評議員、日本数学教育学会理事も歴任。著書に『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)、『新体系・大学数学入門(高校数学、中学数学)の教科書(上・下)』(ブルーバックス<講談社>)などがある。数学プロセス (https://sugaku-process.net/)というホームページも運営

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