「B777」後継機、製造担う日本勢に試練 三菱重工など5社の参画が決定

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「777X」も日本企業が構造部位の21%を製造する

こうした競争環境下で、777Xでは日本の参画比率が下げられる可能性も皆無ではなかっただけに、今回の決定に関係者らは胸をなで下ろしている。

「現行の777と同じ部位が獲得できたのはありがたい。経験がそのまま生かせるので、スムーズな立ち上げができる」(三菱重工の鯨井洋一副社長)、「ベストセラー機の後継機にも引き続き参画でき、うれしく思う」(川崎重工の石川主典・常務執行役員)。日本企業の役員からは、歓迎のコメントが相次いだ。

ただし、喜んでばかりもいられない。というのも、ボーイングは宿敵・欧州エアバスと激しいシェア競争を繰り広げており、その影響でサプライヤーに対するコスト削減要求も厳しさを増しているからだ。中でも777Xについては、「現行の777型機よりもはるかに強烈なコスト削減が課せられている」(業界関係者)という。

製造ラインの自動化を急ぐ

これまで300席台の大型旅客機市場はボーイング777の独壇場だったが、エアバスはシェア奪回のために最新鋭「A350」シリーズを新たに開発。順調に行けば今年中にも引き渡しが始まる予定だ。このため、ボーイングが777の地盤を守るには、後継機となる777Xの性能のみならず、大幅なコストダウンで価格競争力を高めることが極めて重要なのだ。

こうした中、たとえば三菱重工は、まず現行の777向け胴体パネル・客室扉の製造で部品加工や表面処理の自動化を図り、「さらに次期777Xでは、組み立ても自動化するなど一段の生産革新にチャレンジする」(鯨井副社長)。川崎重工の石川常務執行役員も「これからは自動化が大きなキーワードになる」と言う。

これまで通りの高い品質を維持しつつ、ボーイングから課せられた厳しいコスト削減要求に応えられるかどうか。航空機産業のグローバルサプライヤーとして、各社の実力が試される。

(撮影:尾形文繁)

渡辺 清治 東洋経済 記者
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