丑年なので株は「買う」でいいかもしれない 短期的には「スピード調整」に警戒が必要だ

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それはさておき、筆者が予想している短期的な株価反落があった後は、主要国の株価指数は、総じて緩やかな上昇基調をたどると見込む。経済や企業収益の実態は、徐々にコロナ禍を脱していきそうだ。

もちろん、ワクチン接種の広がりなどにより、時間はかかるもののある程度感染症の流行が抑え込まれていく、という期待もある。だがそれに加えて一種の「コロナ慣れ」もあるだろう。つまり、企業や家計がマスクの着用など「どのような対応をすればある程度経済活動を回していけるのか」を肌感覚でつかめてきていることも大きい。そのなかには、リモートワークやリモートの有料サービス(ライブ中継、観劇、セミナーなど)の普及も含む。

加えて、そうした自律的な経済活動の持ち直しだけではなく、政府や中央銀行による景気支援策の存在も大きい。2021年の終わり頃にかけては、現時点に比べると景気や企業収益は大きく持ち直しそうだ。それでも、財政政策や金融政策は慎重を期し、同年内は景気支持的な方向性が維持されるだろう。

とすれば、そこそこの景気や企業収益の回復が株価を支えるいっぽう、回復度合いもそこそこにとどまる。そのため、政府や中央銀行の景気支援策も続くといった、いわゆる「ゴルディロックス相場」が見込まれる。ちなみに、同相場は少女ゴルディロックスが、登場する童話のなかで飲む「熱すぎず冷たすぎないスープ」に基づいている。

「行きすぎた期待」をしてはならない

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こうした短期警戒、長期楽観の相場観からは、足元で「売りから入る」ことは勧めない。もし株価下落が生じても前述のように暴落には至らず、いずれ株価は反転上昇に入ると予想するからだ。

現物で株式の個別銘柄や株式ファンドを保有している場合は、特に何もせず、ずっと保有しているか、余裕資金があれば下落時にある程度買い増しすることがよいだろう。また、現時点で手元に余裕資金がある場合は、株価下振れの局面を欲張らず、すぐに現物株式などを購入して、「まあ、目先は株価の下振れがあるかもね」と達観しているほうがよいだろう。押し目を待ちすぎると、買いを逃すということはよくあることだ。

最もやってはいけないのは、筆者の見通し通り1割程度の株価下振れがあったときに、「もっと下がってしまうかもしれない」と恐れ、投げ売りしてしまうことだ。

基本的に買いポジションをずっと維持して、もし「不幸にして」筆者の短期警戒予測が的中したときには、「馬渕さんが言っていた通りだね、別に慌てることはないね」と、コタツに入ってミカンでも食べながら、のんびりゆっくりとくつろいでいただければ幸いだ。丑年なので、基本姿勢は「買う」(COW)だ。

もし「くつろいでいられるような心理状態ではない」となってしまうなら、繰り返しになるが、それは市場が悪いわけでも、専門家の株価見通しが悪いわけでもない。自身の期待が行きすぎて、期待とは異なる客観的な情報を排除していることが悪いのだと考える。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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