論争勃発! 小学校の英語教育は意味がない!? 日本の英語教育を変えるキーパーソン 水野 稚(1)

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英語はやればできるようになるのか?

水野:もうひとつ、やればできるようになる前提でお話をされていますが、算数でも理科でもどの科目でも、できる子とできない子と出てきますよね。安河内先生のお話では、英語だけはたくさんやればできるようになる、とおっしゃっているように聞こえるのですが。

安河内:英語だけはたくさんやればできるようになる、とは思いません。私が思い描いている全体像は、英語が「話せるようになる」ためには、6年とか10年とかの長い時間がかかります。

水野:年数で言うと、数字のマジックになりますので、学習時間で言うほうが適切です。

安河内:国内で普通に授業を受けているEFL(English as a Foreign Language:外国語としての英語)環境での話ですね。日本の公教育の枠組みからすると、学校で普通に授業を受けていて話せるようになるのは、18歳や20歳になる頃だろうと思うのです。

ただ、よくある小学校の英語教育に対する誤解が、小学校の頃から英語を浴びるように学んでいれば、中学くらいでペラペラしゃべれるようになるのではないか、というものですね。

水野:親御さんにはそういう期待もあるようですね。

安河内:これは私ははっきり否定したいのですが、そういう目的で小学校で英語教育を導入すると、絶対に失敗するし、パニックを引き起こすと思います。

現在、中学から始まっている英語教育からのドロップアウトの率は高いです。それを低くするためのひとつの方策として、小学校から英語教育をやるのであれば、いいのではないかと思っています。でも、単なる前倒しで、小学校のうちからいっぱいやらせればいいという考えには、賛成できないです。

水野:とはいっても、世の中の親御さんたちは、かなり色めき立っているのではないでしょうか。

安河内:そこは私も危険だと感じています。

「すぐ話せるようになる」という世間の誤解

水野:今回のこの対談のポイントのひとつは、小学校のうちから英語をやることがなぜいいのか、ということに対する世間の誤解を解くことでもあると思うのです。小学校のうちからやっておけば「話せるようになるからいいんだ」と思っている人は、きっと多いと思いますよ。

安河内:それは違いますね。小学校でやったからすぐに話せるようになるわけではありませんね。

水野:それは違うんだと、もっとはっきり言ったときに、はたして世論が今の文科省の方針にYESと言うかどうかは、わからないですよね。自分が思っている、それぞれが思っている英語教育をやってくれると、きっと世間はおのおのが思い描いているのだと思います。

安河内:確かに私もそれは感じています。現在だと8年間、小学校低学年からの導入が実現したときには10年間の英語教育が終了したときに、平均的にどれくらいの英語力が達成されているのかというビッグビジョンが、人によって違う。このビッグビジョンを統一しないで、小学校での話ばかりをすると、誤解を招いてしまいますね。このビッグビジョンの目標とする到達点を明確にしていかなければなりません。

(構成:宮園厚司)

安河内 哲也 東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師

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やすこうち・てつや / Tetsuya Yasukochi

1967年福岡県生まれ。上智大学卒。予備校講師、教育関連機関での講演などで実用英語教育普及に従事。著書に『子どもの英語力がグンと伸びる最強の学習』(扶桑社BOOKS)など。

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