Spotifyに「月刊ムー」「美術手帖」が参入の狙い 若年層などファン開拓へ、旅行系の「TRANSIT」も

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2誌とは対照的に、ポッドキャスト向きともいえるのが『月刊ムー』だろう。超常現象から怪談、陰謀論、古代文明、UFOなど、多彩な超日常のミステリーを扱う雑誌ゆえに、文章化に至らない「固まっていない」ネタ、調査中のネタが多いのだ。各分野の専門家を招いて語ってもらうことで、スペースに制限がある文章よりも多くの情報を伝えられる可能性もある。番組のイメージは「公開打ち合わせ」だという。

番組では日常に潜む謎を重視する考えだ。ムー編集部の望月哲史氏は「大きなテーマだととりとめがなくなってしまう。日常の話題を起点として、今のオカルト的にはこうなっていくのではないか、と広げていきたい」と語る。

実際、第1回目は「アメリカ大統領選と陰謀」、2回目は「イルミナティカードの予言」(1990年代に普及した対戦ゲーム用カード)だった。今後は、最近、世界各地に出現している謎のモノリスなど、時事的な話題も取り上げていく考えだ。

Spotifyのファン獲得のカギとなるか

Spotify側も近年、世界規模でポッドキャストに力を入れている。ダニエル・エクCEOは「世界をリードするオーディオプラットフォームになる」と語り、ポッドキャスト関連企業の買収などを進めてきた。ポッドキャストはユーザーの関心度を高め、解約防止や他社との差別化で効果があるとの分析によるものだ。コンテンツは年々増え続け、今や190万番組に達している。

日本では2019年2月からオリジナル番組の制作を始めた。現在は「kemioの耳そうじクラブ」や「莉子のよくばりホームルーム」といった、若い世代のトレンドリーダーによるトーク番組に加え、お笑いトリオ・ロバートの「ロバートpresents聴くコント番組〜秋山第一ビルヂング」など、コメディ番組が人気だという。

Spotifyによれば、国内ユーザーの1日当たり平均聴取時間は128分(音楽とポッドキャスト)と非常に長い。コロナ禍で以前のような通勤・通学時間、夕食後、就寝前といったスポット的な利用動向から、1日中聴かれる傾向に変化しているという。巣ごもりで音楽、ポッドキャストともに「ながら利用」が増えているとみられ、今は聴取時間を伸ばすチャンスなのだ。

今後もクリエイターやコンテンツホルダーとのコラボレーションを重視する姿勢で、#聴くマガジンでも多彩なコラボ番組が誕生する見通し。各雑誌の熱量をユーザーにアピールし、継続的に聴取するファンとして取り込むことが、「耳の可処分時間争奪戦」を勝ち抜く重要ポイントになりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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