同年10月には精神科の私立病院団体である日本精神科病院協会(日精協)が、山崎學会長名で声明文を発表した。ロクサンマル調査は「個人情報保護の観点から問題の多いものであると認識していた」とし、声明文発表の2カ月前に毎日新聞が、50年以上入院する患者が全国に1700人以上いると報じた記事に触れ、「まさにわれわれの危惧が現実となったものである」と批判した。
調査主体である厚労省が個人情報保護のための必要な措置を行わない場合は、「ロクサンマル調査への協力について再検討せざるを得ない」と、調査の存続危機をも思わせる声明となっている。
こうした情報公開に逆行するような動きに、当事者たちからは反発の声が湧き起こった。非開示や一部開示決定について不服を申し立てる審査請求の実施、日精協の声明文への批判、反対集会の開催など強い抵抗もあってか、2019年度の調査協力依頼文からは調査票の扱いを制限する文言はなくなっている。ただし、各市民団体が行った情報公開請求の結果をみると、身体拘束数などの一部のデータは依然として非開示のままだ。
前出の地業研の飯田氏は、「これまでの情報開示も、簡単に達成できたことではありませんでした。東京都や京都府でロクサンマル調査結果の情報公開を求める裁判を起こし、1999年に京都地裁が開示を認めた判決をもとに、活動に取り組んできました」と、現在に至るまでの経緯を語る。
全国的には大幅な情報の非開示は改善されてきた中、例外的に2019年度分のデータさえも全面的に開示を拒んだのがさいたま市だ。
今も続く非公開
埼玉県の精神医療を考える会は、さいたま市内の7つの精神科病院についてロクサンマル調査結果の情報公開請求をしていた。2020年9月にさいたま市から送られてきた「行政情報一部開示決定通知書」は、48項目に及ぶ全調査票のうち、47項目が一部または全面的に非開示とされていた。
さいたま市が非開示とした理由は、主に2つ。1つは個人を特定できる可能性があるため、もう1つは病院の運営上の正当な利益を害するおそれがあるためである。
だが、同会が埼玉県に対して行った同じ2019年度のロクサンマル調査の情報公開請求では、当時県側にデータが提出されていなかった1病院を除き、市内の6病院分のデータがすでに得られている。まったく同じ情報にもかかわらず、なぜ市は開示できないのか。
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