読売新聞、M&A攻勢で回帰狙う「あの頃の巨人軍」 レジャー強化で伝説の多摩川グラウンド再現も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

近年のプロ野球界では球団と球場の「一体経営」が強く意識され、主流になっている。多くの球団が球場との一体経営にすでに移行するか、まもなく移行する。巨人軍は(球場と)そうした関係になっておらず、東京ドームとの関係を再強化すべきときに来ていると、かねて考えていた。そこに(香港の)投資ファンドのオアシス・マネジメントが買い付けをしてきた、というのが私から見た展開だった。

東京ドームは2020年7月にスタジアムの大規模投資計画を発表済み。コロナ対策やデジタル化などを進める構えだ(記者撮影)

――オアシスが東京ドームに買収提案をする緊急事態でも、連携する関係だったわけですね。

2020年1月に東京ドームがオアシスからの買収提案を受けた段階で、長岡勤社長から「至急相談したい」と電話を受け、ほぼリアルタイムで事態を把握していた。そういう関係ではある。ただ、他の球団はもっと先を行っている。今回のTOBはオアシスの買い付けがなければ始まらなかったものだが、読売グループと東京ドーム双方にとって、結果的によい展開になったと考えている。

――東京ドームの株式20%を保有すると決めた理由は何でしょうか。また、長期保有の方針でしょうか。

三井不動産から株主としての参加を要請されていた。比率については、三井不動産が主導するTOBで、成功後に果実の一部をいただく形なので、バランスを考えると持ち分法適用会社の下限である20%が適当という判断だった。長期で保有する考えだ。

オアシスの経営改革案は的確なものが多かった

――オアシスの経営改革案「より良い東京ドームへ」について、山口社長はどう評価していましたか。

スタジアムについての提案は頷けるところが多々あった。大型ビジョンの拡張、デジタルサイネージの導入、スマホチケットなどキャッシュレス化、飲食の品質の向上、通信インフラの強化などを挙げており、的確なものが多かった。

山口寿一(やまぐち・としかず)/1957年生まれ。1979年に読売新聞社入社。記者として社会部で司法担当などを務める。2015年に東京本社社長、2016年に読売新聞グループ本社社長。2018年に読売巨人軍オーナーに就任(撮影:尾形文繁)

実際、東京ドームは老朽化しているところがあっても、改修が後回しになっていた。同社は水道橋エリア以外でも事業を展開しており、多額の有利子負債も背負ってきた。負債を減らしながら施設設備を改修し、減価償却負担を算定し、最終利益を確保するという上場会社として難しい舵取りをしている。改修に関してわれわれの要望は叶えられていないが、やむをえないところもあったと思う。

ただし、ファンにとって不愉快なことがあれば、よい試合をしても台無しになってしまう。前の座席との間隔からトイレの数、コンコースの混雑度合いなどもそうだ。いつまでも手をつけないと、他球団が一体経営でファンの満足度を高める中、取り残されてしまうという危機感があった。東京ドームの経営陣がわれわれと同じだけの危機感を共有できていたかというと、そこに若干の疑問はある。

次ページ球場はどうリニューアルされるのか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事